7日目 「ブルースターマリン」
30分ほど車に乗っていると、小さな街が見えてきた。
「マリー、あそこが今日行く街なの?」
みよのこの世界で居場所はずっと孤児院だった。だから、みよはこの世界の街は初めてだった。
「そうよ! ......とは言っても昔お父様と一回来たきりなんだけど。」
みよは初めての街。そして、マリーと初めてのお出掛けに胸を躍らせていた。
「ついたわ! 早くいきましょ! みよ!」
みよは、マリーに手を引かれ車を降りた。
車を降りると、急に風が吹いて落ちていた木の葉が舞い上がる。
(あの時と逆だ......)
みよは、マリーと魔法で落ち葉を燃やしたあの日、自分もマリーの手を引いて走ったことを思い出して、にやにやと微笑む。
「みよ? どうして笑ってるの?」
「ううん、なんでもない!」
マリーは不思議そうに首を傾げていたが、街をみて彼女は言う。
「たしかに一回きたはずなんだけどみよと来るとなんだか別の場所みたいね!」
(どうして恥じらいもなくそんなことが言えるんだろう。......やっぱりマリーは天然だ。)
「これが街......」
みよはこの世界に来る前、ガイドブックなどでみたことはあったが外国に行ったことがなかった。だから目の前にある西洋風の、カラフルで、石畳の街をみて、ただただ息を飲まずにはいられなかった。
「みよはこの街はじめて?」
「う、うん。ずっとあそこだったから......」
「じゃあ、私が案内してあげる! 来たのはだいぶ昔だけれど大体の場所は覚えてるから!」
最初は、お洋服屋さんに入った。店の中に入ると貴族が着るような立派なドレスから、庶民の着るおなじみの服まで幅広い品揃えがあった。
私が、庶民が着るような服を手に取って悩んでいると、
「ミヨ=フォン=ファルクール。それが今の貴方の名前よ! 私の養女になったからにはお家の名に恥じない格好をしてもらわないと困るわ!」
そう言って、満面の笑みで私にマリーは自分の選んだ服を勧める。
「ふりふりのドレス......」
そう、マリーが勧めたのは青色で、キラキラとした星の模様がついた美しいドレスだった。
「かわいい! かわいいわ! みよ! これにしましょ? すっごく似合ってる!」
「でも、これ高いんじゃ......」
ふと、値札をみると、みよにはこの世界の価値基準はわからないが、他の服より金額が一桁多いことに気づく。
「いいのいいの! 今日はみよにプレゼントするために来たんだから。それに本当に似合ってるわ。」
「で、でも......」
「すみません! これください!」
すかさずマリーは店員さんに声をかける。
「ブルースターマリンですね! お客様お目が高いですね! 実はこれ王都の方からきた有名なデザイナーさんが作ったものなんです。ドレスもこれ一点限りなんですよ!着ていかれますか?」
マリーは目をキラキラ輝かせてこちらを見ている。
(やっぱリマリーにはかなわないや。)
「着ていきます......」
執事のバルクが支払いを済ませると、私達はそこを後にした。
(......見られてる。)
遠くから声が聞こえて来る。
「あら、みてあの素敵なドレスどこかのお姫様かしらかわいいわねぇ。それに隣の子もまだ小さいけどいい顔だちをしているわ! 将来絶対べっぴんさんになるわ。 姉妹かしらねぇ?」
みよは、急に恥ずかしくなってその場から逃げ出してしまった。
「ああ、待ってよ〜みよってば〜」
(きていくなんて言わなきゃよかった......)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます