第121話 40歳・墓地

妹と、先に別院を見た。


本寺の敷地内にあるけれど、観光客は入れない場所だ。

こじんまりして、とても雰囲気の良いお寺だった。

それから、私は2度目だったけれど、本寺の方を見た。



「どっちも、いい雰囲気の場所でしょ?

別院の墓地の方が少し大きいけどね」


「うん。いいんじゃない」


妹が言った。


「別院の方が?」


「いや。ここでいいんじゃない」


私は驚いて、


「え!?別院のほうが安いけど」


「うん」


「別院の方が大きいけど」


「うん。いいんじゃない」


即決ですか!?




その年の12月、契約してデザインを決めた。

翌年6月の父の1周忌までには墓地が完成し、川口から祖父母と父の兄弟たちのお骨を移した。




この時、びっくりな決断力を示した妹だったけれど、意外とその後、

「あそこで良かったかなあ・・・」

などと、時々、迷う様子を見せたりする。

私の方は、後悔していないけれど。



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