第122話 今・ついに来た

昨日、とうとう向かいの家が引っ越してきた。


これまで、週末に来ては夕方帰っていったので、今回も帰るのではなかろうかと期待したけれど、夜になっても電気がついていて、7時か8時位からエコキュートが回り始めたようだった。


本当はもちろん夜中から始まるのだろうけれど、初日だからだろう。


さすがに距離があるから、以前経験したような全身総毛立つおぞましいまでの音はしなかった。

それでも寝苦しく、夜中何度も起きてしまった。


今日も、昼間、時々動いているような気がした。

もちろん、浄化槽の音や、他の機械の音かもしれない。

いちいち向かいの家の近くまで行って確かめるわけにもいかず、断言できないけれど、やはり、エコキュートの音は他の低周波と少し違う気がする。


チリチリピリピリと皮膚が痛む。


普通の低周波で痛む痛み方もして、胸が重くなったりもするので、そんな微妙な違い方のみで、はっきり区別がつくほどの差ではない。


昨日、ヒーリングに行ったばかりだったせいか、それともやはりある程度離れているせいか、慌てて荷物をまとめて逃げ出さなくても大丈夫なような気がする。

まだ、たった一晩では、なんとも言えないけれど。

ただ、やはりつらいことはつらいので、このまま一生ここにいるわけにはいかないのだろう。


とりあえず数日様子を見てから、対策を立てようと思った。


まずは、また計測器を借りて、客観的にはどの程度の音が出ているのかを調べなければならない。

それから、専門家に相談して、何かできることがあるかどうかを検討する。


少し時間がかかるだろう。


その間、治療を増やさなければならないけれど、なんとか家にいたまま、動くことができるかもしれない。

良かった。

まず大慌てで逃げ出さなくてはならないほど酷かったら、もう何もせず諦めて引っ越さなくてはならなかったかもしれない。

ただ、数値的に大した数字は出ないだろうから、結局何も打てる手もなく、家を離れる結果になるかもしれないけれど。


2ヶ月、いつ来るかと不安だったから、この家をあきらめられたわけでは無いけど、とうとう彼らが引っ越してきたことに対して、自分の中に失望や、不安や怒りもあるのは否定できないけれど、思ったよりは落ち着いている。

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