第90話 30代・詐欺全容3
粉飾決算も虚しく、やがて、H不動産は倒産した。
決算期が過ぎれば、会社が買い取る約束は、当然の如く、守られなかった。
倒産まではなんとか支払っていたのだろう、ローンはストップし、父のところに山のような請求の通知が来るようになった。
もし、父がもっと、だらしがない人でなかったら、もう少し早く気付けたかもしれない。
例えば、火災保険の通知などから。
けれど、父はこの件で、一軒は購入したつもりだったし、他にも投資物件としてワンルームマンションを購入してもいて、中身をきちんと見てそれらの通知と区別することはしなかっただろう。
電話を、一台分、多めに支払わされていることに、全く気づかなかった人だ。
そう言った細々したことは、営業の担当者に任せっきりで、全くチェックをしない人だった。
とんでもない事態になっていることにようやく気づいた父だったが、社長など、上の方の連中には全く連絡がつかず、途方に暮れているところに、Yからの連絡が入った。
Y曰く、粉飾決算のために、知らず、物件を購入したことにされた被害者は父以外にも複数いる。
そういう人たちを集めて、弁護士の一人を雇って、H不動産の破産整理の管財人に送り込み、こちらの被害の整理も進めてもらおうと思うが、参加しないか、と。
その弁護士費用として、いくら・・・と、そういうことで、それは始まった。
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