第57話 今・日中運転を断られ・・・
今朝、ヘルパーさんが来て、エコキュートの心配をしてくださった。
私は、機械の設定で4時間まで日中に運転できるそうだから、電気代の差額はこちらで持つからと、それをお願いしたと伝えた。
でも、ヘルパーさんは、それも飲んでくれないのではないかと言う。
このとき私は、そんな事はなかろうと思った。
給湯器を変えることとか、エコキュートを移設してもらう事は、まあ断られても仕方ない。
そこまで飲んでくれる人はなかなかいないだろう。
今は、とりあえずエコキュートを使う時間帯をずらしてもらうだけだ。
さらに電気代の差額はこちらで持つ。
どうして、その程度の事がしてもらえないと思うのか、不思議だった。
大体において、これは私の癖なのだが、自分がやる程度の事は誰でもやってくれるはずだと思っている。
私は別に、特に親切な人間ではないし、そんな特別親切な人間でなくてもやる程度の事は誰でもやってくれるだろうとそう思って生きている。
だから、なぜ聞いてもらえないと思うのか、不思議だった。
機械の設定で時間帯をずらすだけ。お金もかからない。
それもイヤ、という理由が分からない。
大体、前の家の人が不親切だろうとは私は思っていない。
だって、本当に不親切だったら、浄化槽の位置も変えてくれなかっただろうから。
ヘルパーさんが帰った、昼ごろ、新居にお隣の方がやってきていた。
お引っ越し前のお掃除に来たらしい。
ちょうど直接お話できる機会だと思い、エコキュートの設定の資料等
持って、お願いに伺った。

だが、
「ご希望には添えません。
うちの方ではもう精一杯やったつもりなので、後はそちらで何とかしてください。
浄化槽の位置も前のほうにしたし」
「はい。わかっています。ありがとうございます。
ただ、エコキュートのほうは、あれにしないでいただきたかったんですけど…」
「うちのほうも、いろいろギリギリで建ててるんですよ。
電気代とかいろいろ考えて、あれにしたんです。
差額を払うと言うけど、あなたがいなくなったらどうするの。
ずっと払い続けてくれるの?」
「これは、機械の設定を変えるだけですから、私がもしいなくなっても、またもとに戻せばいいだけです」
「そんなこと私、できる気がしないし、大体、エアコンだって一晩中つけるかもしれないじゃないですか」
「もし、設定変えるのが分からなくて業者さんにお願いするのなら、私の方でお支払いします。電気代の差額もお支払いします」
「そんなもの欲しくないです。
大体、あなた、鎌倉でも病気でこっちに引っ越してきたそうですけど、こんな、浄化槽のところに来ることないじゃないですか」
「鎌倉では電磁波過敏になったんです。
工事の音や、飛行機の音です。まさか浄化槽でまた悪化するとは思っていなかったんです」
「音には違いないでしょう。
それに、こんなふうに手紙をよこして、パソコンが触れるの変じゃないですか」
「長くは触れませんが、少しだけなら。手がこれですから、読みやすいようにと思ったんですけど」
「設定を変えると言うけど、4時間なんでしょう?それだけで眠れるんですか」
「 昼に4時間移していただければ、短い時間なら何とか我慢できると思うんです」
「とにかく、うちはもう、何もしません。
あとはあなたも、何か工夫してください」
「…でも私も眠れませんから、諦めるわけにも参りません」
「それじゃあ、対立するしかないですね」
「はい。分りました」

相手方はすっかり気を悪くしていた。
移設や、他の給湯器に変えてくださいとお願いしたのがまずかったのだろうか。
でも私の1番の希望はほかの給湯器に変えてもらうことだし、それが無理でも日中運転だけでもご検討くださいとお願いした。
日中の運転の事だけ頼めばよかったかと言えば、結局、日中に運転するにしたって4時間までなのだから、完全な解決には至らない。
1番良いのはあれがなくなることだ。
だからそれを頼んだ。
頼んだことが悪かったとは思わない。
正直に頼んだだけ。
でも、責める気持ちはあった。
はっきりそうと書いたつもりはなかったけれど、言葉の端々にそれが出ていたのだろう。
私は彼女を責めた。
そして、傷ついた彼女は頑なになった。
責めた自分を悪かったとは思わない。
だって、これで家にいられなくなる。
どこかに行かなくてはならなくなる。
そう思えば、どうして責めずにいられるだろう。
頑なになった彼女も悪くない。
そんなつもりはなかったことを、責められれば傷つく。
そして自分を守ろうとする。
傷つけた相手を憎む。
仕方ない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます