第2話 発症前

生まれたのは埼玉県川口市。

鋳物の町だった。


今でこそ住みやすい街ランキングとかにも顔を出すけれど、私が子供の頃は真っ黒な町だった。

毎年のように公民館で、キューポラのある町の映画上映してたけど、私は一度も行ったことがない。

黒くて、臭くて、いやな町。

住宅と工場が入り交じって、うちのすぐ前にも大きな工場があった。


洗濯物はまっくろ。窓もまっくろ。

黒い屋根と思っていた家が、工場が半分敷地を売って縮小した次の年、モスグリーンになって、さらに明るい色になっていって、ほんとは緑色だったんだなあって驚いたのは20代の頃だった。


子供の頃から体が弱く、しょっちゅう熱を出しては病院に行った。

小さい頃はまだ水薬でマシだったかも。

中学に上がってからは毎年恒例のように抗生物質が処方され、年に2回ほども飲んでいたと思う。


過敏症患者は抗生物質多用している人が多いらしい。


薬の影響と、子供の頃から吸い続けた黒い煙。


多分、それが下地。


持って生まれた体の弱さもあるけれど。

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