23

コンコン!!


不意にドアをノックする音が響いた。

ザンザスは、ソファから立ち上がりドアへ向かった。


「…誰だ?」

「俺だぁ~」


またうるせぇ奴が来たな。

カチャリ…。

ザンザスが、静かにドアを開けた。


「リリィが寝てる。うるせぇとカッ消すからな」


言われて、スクアーロがベッドに視線をやると。

何も纏わず、毛布にすっぽりくるまったまま、寝息を立てているリリィの姿があった。


「ザンザス…?」

「何だ?」

「リリィをどうした?」


ザンザスは、言葉に詰まっていたがやがてこう言った。


「…抱いた。リリィの希望でな」


安堵しきった寝顔で、ザンザスのベッドに横たわるリリィ。

まだあどけない寝顔だった。


「貴様は…妹を抱いたのかぁ~」


密かに寄せていた、スクアーロの、リリィへの想い。

ザンザスは気付いていたが、リリィが望んだのは兄のザンザスの愛だ。


「っるせえ!貴様に…貴様に何が判る?」


スクアーロはその場に立ち尽くした。

ザンザスが苦悩する姿を見るのは、初めてだったかも知れない。


「…どうやら俺の出番はなさそうだな。邪魔したな」


そっと部屋を後にした。


「けっ!完敗だぜ!」


スクアーロの瞳にキラリ、光るものが見えた気がした…。

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