21

『ベッドに来い』


ザンザスの、決意の言葉だった。


「うん!」


リリィは嬉しそうに、ザンザスの後をついて、ベッドに入った。

そのまま。

ふたりの身体が重なる。


「お、にい「黙れ、リリィ」」


言葉を遮る様に、ザンザスは、リリィの唇をキスで塞いだ。


「俺に任せろ」

「ん…」


ザンザスの唇が、リリィの首筋をなぞる。


「ぁっ…っっ…」


リリィの切ない声が漏れ聞こえて来る。

おにいちゃんが、好き…。

おにいちゃんが、好き…。

リリィの緑色の瞳から、涙がひとつ、零れ落ちた。


「リリィ?嫌なのか?」

「ちが…嬉しいの…」

「そうか」


その言葉を聞いたザンザスは、リリィの背中の傷痕に、そっと口付けした。

そんな事で、リリィの過去が消せる訳じゃない。

そんな事は判っている。

だが…。

俺がリリィを抱く事で、忌まわしい記憶を忘れられるのなら。

ザンザスは、静かにその身を、リリィの中へと進めていった。


「お、にい…」


堪らずリリィが、ザンザスにしがみついた。

こんな…。

こんな感じ初めて…。

リリィは戸惑っていた。

今までは、望まぬ相手に無理矢理犯された。

何度も死にたいと、泣いた。

これが、本当に好きな人に抱かれるって事なんだ…。


「リリィ、大丈夫か?」

「おにいちゃん…好き…」

「ああ、俺もだ。リリィ」


リリィ。

俺がお前を守り抜こう…。

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