19

こんな気持ちにさせた女は、リリィが初めてだ。

この感情は、兄としてのものだと思っていた。

だが今、はっきり感じた。

これは恋だ。

俺はリリィをひとりの女として愛してる。


「リリィ、泣いているのか?」


バスルームに向かって声を掛ける。


「な、泣いてなんかないよ」


赤い目をしたリリィが顔を出して言った。

ふっ。

嘘が下手だな。


「今夜、お前を…いや、何でもない」


ザンザスが言葉を切った。


「おにいちゃん」

「ん?どうした?」

「今夜、一緒に寝ていい?」


何かを察したのか、リリィが言う。


「ああ、お前がそうしたいのならな」


それだけ言うのが精一杯だった。

俺は…。

理性を保てるだろうか?

いや、それは無理だろうな。

今夜、俺はリリィを抱いてしまうだろう。


「俺も風呂に入って来る」


ザンザスの姿がバスルームに消えていった…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る