17

「この部屋だな」


少し離れた場所にあるその部屋は、アジトの中でも一番大きなゲストルームだった。


「うわ、綺麗ね?おにいちゃん」

「ああ、気に入ったのか?」

「うん、イタリアのお城も大好きだけど。あたし、日本が好きになりそう」

「そうか。たがな、リリィ、これだけは守れ。外には絶対に出てはいかん」

「え?なんで?」

「出ればお前は殺される」


殺される…?

殺される…?


リリィの中で『殺される』という言葉が木霊していた。


何度も殺されそうになった。

いっそ死にたいとさえ、思わなかった日はなかった。

兄、ザンザスが、全てを消してくれたあの日までは…。


「お、にい、ちゃ、ん…」


リリィの身体が小刻みに震える。


発作だ。


「リリィ、待ってろ。直ぐ薬を飲ませてやる」


震える手では、薬すら持つ事も出来ない。

ザンザスは薬を口に含んで、そのままリリィに口移しで飲ませた。


「うっ…ふっ…っ…」

「大丈夫だ。お前には俺がついている」

「お、にい、ちゃ…」



声にならない言葉を発して、リリィは何かを訴えようとしていた。


「おにい、ちゃん、が、好き」


おにいちゃんが好き…。

リリィはそう言ったのだ。

兄であるザンザスに、恋をしてしまったリリィ。

ザンザスは、どう答えていいのか、戸惑ったが、やがて答えた。


「俺も、お前が好きだ、リリィ」


嘘偽りのないザンザスの、リリィに対する気持ちだった。

ふっ…。

俺もどうかしてるな。

リリィは妹だ。

なのに…。

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