13




ツナがドアをノックした。

中から女の子の声が聞こえて来た。


「はぁーい」


元気な、その声の持ち主はハル。


「ツナさん!いらっしゃい。あれれ?お客様ですか?」

「う、うん。ハル、京子ちゃん。この人はザンザスの妹で、リリィさんだ」

「ザンザスさんって、あの、ヴァリアーの恐い人ですかぁ?」

「…恐い人で悪かったな」


ザンザスが、リリィを抱く様にして入って来た。


「きゃあっ!す、すみませんです」

「あ、あの、ハルを…」


くっくっ…。

不敵な笑みを浮かべて、ザンザスが言った。


「俺のたったひとりの妹だ。仲良く頼む」

「こ、この方がザンザスさんの妹さんなんですか?美人ですぅ」


くす…。


「ありがとう。リリィです、よろしく」


人見知りの激しいリリィにしては、珍しく、自分から手を差し出した。

その手に…。

そっと、触れる、ハルと京子。

戸惑いが伝わって来る様だった。

多分、リリィの方が少し年上だろう。

ただ、金色の長い髪に、緑色の瞳は、少しリリィを幼く見せていたかも知れない。

兄ザンザスの、リリィに対する接し方がまた、幼い子を相手にしている様にも伺えた。


「さて、俺は外を見て来る」

「おにい、ちゃん?」

「あぁ、沢田。それから、ハルと京子?リリィを頼めるか?」

「私達は構いませんが…。じゃあ、リリィちゃんって、呼んでもいい?」


京子が聞いた。


「ええ。あたしも同じに呼んでもいいの?」

「勿論です。私達これからお友達です。ね?京子ちゃん?」

「うん、そうだね」

「おにいちゃん、リリィにお友達が出来た」

「あぁ…。良かったな」


安堵の表情を浮かべ、ザンザスは部屋を後にした。


「ザンザス」

「…何だ?」


ツナがザンザスを呼び止めた。


「あの、何処へ行くつもりなの?」

「沢田、今の俺達の敵は誰だ?」

「白蘭か?」

「そうだ。俺は奴をかっ消す為に日本に来た。リリィは俺から離れる事が出来ないから、仕方なく連れて来た。リリィに危害が及ぶ前にミルフィオーレを倒す」


ザンザスの、覚悟が見えた瞬間だった。

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