10

──眼下に少しずつ見えてきた日本。

もうすぐおにいちゃんに会えるんだ。


「リリィ?元気がないんじゃないの?」


少しだけ心配げな、ルッスーリアの声。


「あ…、そ、そんな事ないよ」


それでも、リリィは、ザンザスの顔を、その手の温もりを、確かめるまでは不安だった。

爆音と共に、地上が近づく。


「リリィ」


懐かしいその声。


「おにい、ちゃん」


…この娘が、ザンザスの、妹?

金色の髪に、濃い緑色の瞳。

多分、誰しもが振り返って視線を集める事だろうか。


「沢田綱吉!何を突っ立っている?」

「あ…じ、じゃこっちに」


リリィは…。

ザンザスに会えた嬉しさを、隠そうともせず、甘えている。

それがまた、更にリリィの愛らしさを引き出していた。

ザンザスが溺愛しているのが、よく判る。

この美しいブロンドの姫君に、迂闊に告白なんかしたら、瞬殺される事だろうな。


「地下に女の子達専用の部屋がありますから」

「あたし、おにいちゃんと同じ部屋がいい」

「だ、そうだ。俺の部屋にリリィのベッドを運んでおけ」


はぁ?

兄妹で同じ部屋??

どうなってるの?

この兄妹?

いや!

余計な事は言わない方がいい。

ツナは、ザンザスに言われるままに、部屋を用意した。

…関わらない方がよさそうだな。

そう心に決めたツナだった。

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