深夜。

ふと、リリィは目覚めた。

隣にいる筈の、兄がいない。


「おにいちゃん…」


堪らなくて、ケータイを取り出した。


トゥルル~♪


何度目かのコールで、ようやくザンザスは電話を取った。

ディスプレイの名前を見て、動揺していた。


「「リリィ。どうした?」」

「おにいちゃん…、いつ帰れるの?」


涙混じりのその声に、ザンザスは、リリィを残して来た事を今更ながら後悔していた。


「「もう少しだけ、な。我慢しろ」」

「おにいちゃん…リリィも日本に行きたい、よ」

「「そうか…。ルッスーリアはいるのか?」」

「隣の部屋にいるよ?」

「「代われ」」

「うん」

「ルッス姐~おにいちゃんが電話代わってって」

「何よ~睡眠不足はお肌の大敵なのよ~」

「「ルッスーリア、明日リリィを連れて日本に来い」」

「へっ?ボスったら~リリィが恋しくなっちゃったのねん」

「「るせぇっ!リリィが泣いてる。それだけだ!」」


本当は、ザンザスもリリィが恋しかった。

でもそれは口が裂けても言えないザンザスであった。

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