ヴァリアー専用機で、日本に向かった。

機内から眼下に広がるのは、雲と、時折海が見えるだけ。


「リリィ…」


ザンザスの、たったひとつの心残りは、イタリアに置いて来た妹の事だった。

ふっ・・・。

不敵な笑みを浮かべて、グラスの中のブランデーを飲み干した。

この俺が。

ヴァリアーのボスである、この俺が、なんてザマだ。

リリィの顔が、声が、頭から離れないなんて。


リリィもまた、ザンザスの事を考えていた。


「おにいちゃん、大丈夫だよね?」


留守番役のルッスーリアが答えた。


「大丈夫よぉ。ボスは殺したって死なないから」


殺したって死なないって、酷くない??


「ルッス姐、おにいちゃんって、強いよね?」

「当ったり前じゃな~い。じゃなきゃ、こんなトコにいたら寝首をかかれてるわよ」


それも、そうだね。

ヴァリアー基地で、あれだけの威厳を持った兄を、リリィはずっと誇りに思っていた。

でも。

日本って、どんな所なんだろうな??

今度、おにいちゃんに連れて行って貰おう。

ボンゴレの10代目って、おにいちゃんより強いのかな?

・・・どんな人なんだろうな。

会ってみたいな。

ボンゴレのボスにも、守護者の人たちにも。


「リリィ、食事にしましょ?」

「うん」


屈託なく笑うその笑顔を、守れるのは兄、ザンザスだけだった。

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