ザンザスの寝室に用意されていたリリィのベッドは。

天蓋付きの、これまた金と白で統一された乙女チックなベッドだった。

無論ルッスーリアの趣味だった。


「これ…?」

「あぁ。オカ…ルッスーリアの趣味だろうよ。相変わらず悪趣味だぜ」

「素敵…」

「気に入ったのか?」

「うん。あたし…此処で寝ていいの…?」


おどおどしながら、リリィは聞いた。

そのリリィの様子を見て…。

ザンザスは胸が痛んだ。


何故?

もっと早くに救えなかった?

何故?

もっと早くに判らなかった?

ただ…取り返しのつかない過去を、悔やんでいたのだった。


「お前はもう何も怯える事はない。もう寝ろ」

「おにいちゃん、ありがとう」


そう言って、リリィはザンザスの頬にキスをした。

ふっ!

この俺が、柄じゃねぇな。

リリィが愛しいなんて。

妹ってのは、こんなにも可愛いものなのか?


リリィは、ふかふかのベッドに横たわった。



──静かな寝息が、聞こえて来た。

安心したのか。

ゆっくり休め。

リリィ。


眠るリリィの頬にキスを落として、そっと部屋から出て行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る