5
ザンザスが心を痛めているのは、リリィの生い立ちの事だった。
リリィを弄んだ奴はかっ消した。
だが。
リリィの傷は消せないのだ。
身体に付いていた鞭の傷痕は、いずれ消えるだろう。
しかし。
失ってしまった大切なものは、もう元通りにはならない。
リリィは、それを充分には理解していないだろう。
「俺が…守ってやりたかった」
ザンザスの苦悩が、伝わって来る。
そっと、寝息を立てるリリィの髪を撫でれば、ん、と小さな声を出して、安心しきった寝顔を向けた。
さらさらと、きらめく金髪がその白い顔にかかる。
ザンザスは、時を忘れいつまでもリリィの寝顔を見つめていた。
「妹か…。不思議な気分にさせやがる」
ザンザスにとって、初めての感情だった。
『愛しさ』
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