第3章 初めてのサンタクロース会議 3

 寮で荷物を受け取るのを済ませ、仮眠を取った。それから起床後、コーヒーを入れて一息ついていた。これからまたサウーロの街をブラつこうと思っている。

 一人暮らしとは思えないほどの広さである。都内でこれほどの広さの部屋を借りれるのは、一部の金持ちだけである。トウは親が仕送りをしてくれるため、これほど広い部屋に住めるのである。

 「さてと……」心の中の呟きがつい口に出して出てしまったが、これから外に行こうと思う。

 トウが部屋を出て廊下に出たすぐだった。突然目の前にシャクシャクが現れた。シャクシャクの不思議な能力の一つ「テレポート」、瞬間的に移動できる特殊能力である。

 トウはそれほど驚いていなかった。

「ホッホッホッホッ、びっくりしたかな?」

「ちょっぴりね。でももう何回もされているから慣れたよ。どうしたの?」

「サウーロでこれから会議があるのじゃ。トウも出てくれないか?これからノイルッシュに入学することになるとサンタクロースとしての活動が増える。ワシの孫として業界の気の合う仲間に紹介も兼ねて来てもらいたい。仲間達もトウに会いたがっていたぞ」

「そうなんだ。それはぜひ行ってみたい」

「よしそれじゃあ行こうか。身仕度はできておるな」

「あれ?テレポートで行くんじゃないの?」

「ここから近くてのぉ。それに今は帰りの分の体力しか残ってない」

 部屋を後にして繁華街から離れた方角を歩いた。

「ねぇお爺ちゃん、サンタクロース会議ってどんなことを話しているの?」

「そうじゃのう、一言でいうと世界のサンタクロースの行事を計画したり、予算や制度の見直しなどじゃな」

「じゃあ今日はいったい何を話す予定なの?」

「それはじゃな……ブラックサンタクロースじゃよ。最近何かしらおかしなことを考えているやからがいるようでな。その対策を練ろうと思っているのじゃ」

「対策ってどんな?」

「それを今から話し合うのじゃ」

「俺もその話を聞いてもいいの?」

「大丈夫じゃ。さっきも言ったがトウはこれからサンタクロースとして活動するのじゃ。

特にトウは他のサンタクロースと違って会長のワシの孫として活動することとなる。ぜひともトウにも聞いてもらいたい議題じゃよ」

「そうか、いよいよ本当にサンタクロースになるんだな」

 トウはワクワクしていた。

「ホッホッホッホッ!!それとじゃトウ、これからワシの仲間達とノイルッシュでもよく会うことになるじゃろうから、全員とは言わんがせめて何名か顔と名前を覚えるのじゃぞ」

「わかってるよ」

 今までお爺ちゃんとこうして二人きりで話したことがあっただろうか、トウはこのゆっくりと話せる時間が好きだった。城を出るとこうして家族と話すことが少しずつ減っていくのだろうと思った。

「ここじゃ!」

 二人が昔あった思い出を話していると、会議で使うサウーロ会館に辿り着いた。

 トゲトゲした細い屋根が無数にあるサウーロ会館は、サウーロの観光名所の一つでもある。

「おはようシャクシャク」

 会館の入口にあるベンチに一人寂しく座っている老婆が話し掛けてきた。

「この人は?」

「ワシの元恋人のバーブシュカじゃ」

「こっ……」

 トウは驚きのあまり言葉が詰まってしまった。

「何十年前の話だよ。私もあんたも別の家庭を築いているじゃないか。えぇとたしか、トウ君だったかね?私の名前はカクタクフシン・バーブシュカだ」

 バーブシュカは足腰が悪くてベンチの手すりに捕まりながら立ち上がり、トウと握手をした。

「なんじゃバーブシュカ、随分と足腰が弱くなったのう」

「最近は事務作業ばかりでね、肉体労働は若い者に任せっきりなんだ。やっぱり年寄りは運動しないとすぐにダメになるね。私は一足先に会議室に向かうよ」

 バーブシュカは市役所の中に入っていった。

「ワシらも行くぞ!中はワシの城よりも広い、ワシから離れるでないぞ」

 トウはシャクシャクの後ろに着いていった。

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雨国のサンタクロース 不老不死編 氷山あたる @fastrunning

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