第1章 サンタクロースになりたい理由 4

「リンゴ採ってきたよ」

 城に帰った二人はシャクシャクに見せに行った。

「すまないな、トウのためと言っておったが、本当に食べたかったのはワシじゃったようじゃな」

 シャクシャクはリンゴを包丁で丁寧に切ってトウとコンの三人で食べた。

「旨いな。最高じゃ!」

 シャクシャクは口をガシガシと動かしながら言った。

 トウとコンは食べながら黒牛に襲われた時の話をシャクシャクに話した。

「……そうか、そんなことが会ったのか、それは災難じゃったな」

「トウがいて助かったよ」

「戦うのかと思ったらすぐに逃げていったけどね」

「ホッホッホッホッ!さすがじゃ!!」

 紫色のリンゴをシャクシャクに渡した二人は、父親のネイルスタースミス・アートがいるトナカイの小屋に行った。

 トナカイの小屋は真ん中通路で左右に四匹ずつそれぞれのちいさい囲いがあった。入口の左からダッシャー 、ダンサー 、プランサー、 ヴィクセン 、ダンナー 、ブリッツェン 、キューピッド、 コメット という名のトナカイがいる。

「おっ、今日は何しに来たんだ?」

 トウに容姿が似ているアートはトナカイ餌をあげていた。

「トナカイ達にしばらく会えなくなることを伝えとこうと思ってね」

「少し気が早くないか?まだ入学まで少し日があるだろう」

「うん。でも入学前だと忙しくなるからね。今のうちにトナカイとゆっくりと話がしたいんだ」

「俺もトナカイと話してみたいよ。なんというかこういった仕事をやっていると動物の顔の表情でどんな気持ちでいるのかわかってくるが、トウやお父さんみたいに会話するということは俺には出来ないからな」

「そんなに特別なことでもないさ。動物と話せてもそこまで役に立たないよ」

「でも、トウは黒牛に襲われていた時に動物と話してたじゃないか」

 コンは言った。

「あれも別にそこまで役に立ってないじゃないか。向こうが襲おうとしているなら行動でわかるし」

 トウはダンサーを撫でながら言った。

「じゃあ出るとき電気よろしくな。まだ農作業があるから」

 アートは小屋から出ていった。

「トウのお父さんって忙しくて大変だな。トナカイの世話に農業の仕事もあるし」

「あれでもお父さんはやりがいを感じているようだよ」

 この時トウはあることが疑問に浮かんだ。

「……どうしたトウ?」

 何でもないと首を振った。

「ていうか本来はトナカイの小屋はお爺ちゃんがやらなきゃいけないんだけど。お父さんは優しいから」

「おいらもよく小屋をキレイにしてるぞ」

「そうだな」

 トウは一匹一匹に挨拶をした後、全員が見える位置についた。

「明日なんだが、俺と一緒に繁華街に行ってくれる者はいないか?」

 八匹のトナカイはバラバラに吠え出した。

 最初に吠えたのはヴィクセンだった。

「じゃあよろしくなヴィクセン」

 ヴィクセンは「了解」と吠えた。

「それじゃあ、また明日な」

 コンに「またな」と言われたあと小屋を出た。辺りはすっかりと夕焼けが射して一面オレンジ色となっていた。




 




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