恋人ができた俺の事を居候してる美少女が誘惑してくる。「友達」だから大丈夫だと言いながら。
あゆう
第1話 行き倒れ美少女との出会い
「ねぇねぇ、恋人同士の手の繋ぎ方ってどうやるのかなぁ?」
「知らねぇよ」
「ふぅん……じゃあこんな感じかな?」
彼女がそう言うと同時に俺の指と指の間に白くて細く、それでいてやけに柔らかくて暖かい指がスルっと入ってきて俺の手をギュッと握る。
「……っ!」
「へへへ~! そんな感じになるんだね~! うん、これは私も結構ドキドキするかも? 相手が君だからかな? なんてね♪ よし、続き続き……。あ、手は離さないでね?」
「なんでだよ」
「だって、こないだ協力してくれるって言ったでしょ? 後、「頼れ」って言ってくれたじゃない? それに、友達なら手を繋ぐぐらい普通の事じゃない。たとえ君に恋人がいたとしても」
「それは……言ったけどさ。だけどこれは……」
「でしょ? 気にしない気にしない。ただの友達なんだから。それに──離したくないだもん……」
「はぁ?」
「んーん、なんでもなぁ~い♪」
━━これは俺の日常の一コマ。
場所は俺の部屋。俺の右手は彼女の左手と絡み合って握られている一方、彼女の右手はパソコンのキーボードをカタカタと叩いていて、表情は見えない。
くそっ! なんでこうなった! いや、分かってるんだ。俺のお節介が原因だってことは。
あの日、行き倒れていたコイツに声を掛けたのが間違いだったんだ!
◇◇◇
三週間前の事だ。
「今日こそ全部真ん中に……」
学校が終わって放課後、俺は鼻歌を歌いながらいつものネカフェに向かう。趣味のダーツをやるためだ。しかも明日は休みだから更にご機嫌である。
そして俺は店の前に着く。自動ドアが開く。
視界の端に何かが映る。しかし気にもとめずに俺は進んで──
「はあぁぁぁぁ……」
ビクッ!
なんだ!?
突然聞こえた大きな溜息に反応してそっちを向くと、エントランスに置かれたベンチに、ジャージを来た女子がでかいバッグを二つ持って座っていた。
髪の毛はボサボサで俯いているから顔も見えない。服も所々汚れているようだ。
……うん。見ないことにしよう。
俺はそのまま、知り合いのいる受付へと向かった。
◇◇◇
ん~! 楽しかった! 途中で隣でプレイしてた初対面の人と競ったりして、実に充実した時間だった。よし、帰ろう。
俺は帰り支度をして会計を済ます。実は受付のお姉さんとはダーツ仲間で、よく半額クーポンをくれるから俺の寂しい懐事情にはすごくありがたい。
「また来てね?」
「また来ます」
絶対来ます! 例えその言葉が社交辞令だとしても!!
そしてエントランスを抜けて外に出ようとすると、俺が店に入った時に見た子がまだベンチに座っていた。体育座りで。
なんか訳ありなのかな? そうは思っても声をかける勇気なんて俺は持ち合わせていない。
俺は少し後ろ髪を引かれる思いを感じながらも、そのまま外に出て家に帰る。
帰ってから母親にその事を話すと、「家出かしらね? 最近物騒な事件多いから心配ねぇ……」って言ってた。
開けて翌日。
休みだけど特に予定も無かった俺は、朝飯を食った後すぐにいつものネカフェに向かった。
そして驚く。昨日の女子がまたベンチの上に座っていたからだ。
受付の人に聞くと、夜から朝までは個室を借りていて、料金が切り替わる前に出てきてあそこに座っているという。
あれか? 安い夜間パックの時間だけ利用してるってこと? 母さんが言ってた通りに家出なのか?
少し気になったけど、俺はそのまま中に入っていった。
そして昼まではダーツをプレイ。昼飯は中で頼み、午後は個室を借りて読みたかった漫画を一巻から一気読みして、気付くともう夕方だった。すぐに荷物をまとめて会計に向かうと、例のジャージ女と、俺が初めて見る受付の人が何かを言い争っている。少し近づくとその会話の内容が聞こえてきた。
「だから、身分証をだしてくださいって言ってるんです」
「き、昨日はそんな事聞かれませんでした! そのまま夜間パック借りれました!」
「あぁ、きっとマニュアル通りやらなかったんですね。夜間パックの場合、年齢の確認出来る物が必要なんですよ。十八歳以下は利用できないので」
「そ、そんな……それじゃ……」
「だからはい、借りたいなら早く身分証出してください? それとも出せない理由でもあるんですかね?」
「……っ! もういいですっ!」
そう言うとジャージ女はバッグを持って外に出て行った。
俺も会計を済ませて外に出ると、店を出てすぐの所でコートや上着になるような物も着ないで、ボーッと突っ立っているジャージ女を見つけた。今は十月の頭。この時間になると風も冷たくなってくる。
「どうしよう……。住み込みのバイトも見つからないし他の場所なんてもっと知らない……。お金ももう……。お腹、空いたな……」
そんな声が聞こえた瞬間、俺は再び店の中に入り、受付カウンターの脇にある売店で焼きそばパンとホットドッグを買って外に出る。
……いない!?
すぐに辺りを見回すと、ビルとビルの間に入って行く姿が見えた。
俺はすぐに追いかける。そして彼女が入っていった隙間に入るとすぐに見つけた。しゃがんで泣いてる姿を。
「ヒック……な、なんです……か?」
「これ、腹減ってんだろ? 食べなよ」
俺はさっき買ってきたパンを差し出す。だけど一向に受け取る気配がない。警戒されてるんだろう。
「え、でも……その……ヤラシイこととかは無理です……」
「いや、別にやましい気持ちじゃないから。ほら。今飲み物買ってくるから」
俺はパンを無理やり持たせると、近くの自販機で温かいお茶を買ってすぐに戻って渡す。
それで少し警戒心が薄れたのか、やっとパンを食べ始めた。
「なぁ、家出か?」
俺がそう聞くと、少しの沈黙の後小さく頷いた。
「帰らないのか?」
「……帰りたくないんです」
ふむ。まぁ、そりゃそうか。だから家出してんだもんな。
そこで俺はスマホを出してとある人へと電話する。そして少し話した後、彼女へと振り返りこう言った。
「なぁ、うちに来ないか? 風呂だって入りたいだろ? それにこんなとこで一晩過ごしたら風邪ひくか、変な男に連れていかれてもおかしくないぞ?」
「へ、変な男!?」
ぎょっとして後ずさりするジャージ女。
「俺じゃねぇよっ! ほら、よく聞け!」
俺は通話中のまんまだったスマホをスピーカーにして彼女に向けた。
『ちょっとあんた! お母さん、あんたを困ってる女の子一人助けれないようなヘタレに育てた覚えはないんだけど!? それでその子は近くにいるのね? このまま話せば聞こえるのね? いい? 話すわよ?』
「おぅ、話せ話せ」
『とりあえずウチに来なさい。そしてまずは温かいお風呂に入ってご飯を食べなさい。いいわね? 大丈夫。ウチの息子はヘタレだから手なんて出せないから』
「だってよ」
つーか、ヘタレ言うな。
「でも……その……」
彼女はまだ躊躇してる。いきなりウチに来いなんて言われたら当然だよな。けど、
「このままここに居ても最悪なんだ。まだまともな可能性がある方を選んで見てもいいんじゃねぇの?」
「………………」
そして長い沈黙の後、
「……はい。よろしくお願いします……」
これが俺、【
━━こんにちは! 亞悠です!
この度新作を投稿しました。読んで笑ったり、甘さに悶えたりして楽しんで頂けたら幸いです。
そしてこの新作ですが、現在開催されている【カクヨムコン】にも応募しています。目指せ大賞!目指せ書籍化!で頑張っていきますので、良ければ☆で称える、作品フォローなど宜しくお願い致します!
同時新連載のこちらもよろしくです!
勇者残業中!~魔王のせいで恋人も出来ないし仕事も終わらないからちょっと倒してくるわ~
https://kakuyomu.jp/works/1177354055057815551/episodes/1177354055057819247
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