第5話 幕間

 大学の医学部棟から出てきたスーツ姿の二人を見てその人物はほくそ笑んだ。

 自分の目的の一つを達成した上に読み通り他の目的の一つーーーその核となる男がおびきだせたことに喜びを感じているのだった。

 もっとも、自分がこの状況を読んだのではない。異界の神と体が接続した際にその神の狂気が移った彼にそんな深い考えは不可能だ。

 自分に力をくれるきっかけとなった女が全ての計画を立てたのだ。

 その計画に従えば願いが叶うと彼女は自分に言った。彼女が自分に見せた魔法はそれが真実であると告げていた。

 自分の望みーーー長年憧れていた立ち位置にまもなく立てるのだと思うと興奮が冷めやらない。

(傑作だったなぁ)

 自分が殺した男ーーー兼盛 柊一郎の最期の様子を思い出すと笑い出しそうになる。

 なぜ自分が死ぬのかもわからないまま、永遠にも思えたであろう痛みと苦しみに憎かった顔が歪んでいく様は美しかった。

 通常の人間であれば顔をしかめ、吐きそうになるだろう光景も狂気に支配された目で見ると美術品のようだった。

 人の肉が焦げていく臭気も薔薇の花のような香りに感じた。

(ーーー燃やせ ーーー)

 頭の中で声が響き渡る。

 全てを燃やし尽くせと声は囁く。

 炎は美しい。だから世界を炎でつつみこめ。

 それが自分に力を与えた存在の願いだった。

「必ずや」

 そう呟いた男の目は......

 底知れない狂気を孕んでいた。

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