第13話 破局

※作者注意

 この話は運営より修正勧告を受け、一部を削除、簡単な説明書きにて代えさせていただいています。

 物語を完全な形で届けられないことを申し訳なく思いますが、ご理解いただけますようよろしくお願いします。



「んっ……総司くんの……すごいおっきい……」


 手で握りながら春のこぼした感想はそれを見た彰たちの感想でもあった。


「うっわぁ……まじで羨ましいな、これ」

「こんなの動画でしか見たことないよ」

「太さは洋介が自慢してるけど……同じくらいで長さは全然違うよな」


 二人の気分を邪魔しないよう、いつも仲間内でしてる時のように余計なことは言わないと決めていた三人が思わず声に出していた。

 三人が口々に言うように、総司のそれは平均サイズよりもかなり大きい。 洋介が太さ自慢をしてるが長さはみんな日本人の平均かやや短いくらいで大差はなかった。 それと比べると、総司は洋介と同じくらいの太さで長さは両手で握っても確実に余るくらいにある。


 大きければいいわけではないが、高校生にそれが分かるわけもなく三人は心底羨ましそうに総司のそれを見ている。 バカにしてるわけではなくむしろ逆だが、そんなことは総司には何の慰めにもならない。 痛いくらいに屹立した自分自身を親しい人間に見られ、身悶えんばかりの羞恥に襲われていた。

 そんな総司の、ごく当たり前の感性に誰も気付かない。 羞恥と息切れで顔を赤くしているのも、興奮しているからとしか思わなかった。 総司の反応に、春は総司に求められてるようで嬉しく感じていた。


(約200文字削除 キスから総司に馬乗りになった春が行為に及ぼうとする)


「!? 春ちゃん! それは──」

「んっ……うん……キスだけでこんなになっちゃった……本当はゴム着けなきゃなんだけど……総司くんのサイズのはないから……」

「そうじゃなくて──」

「あたしね……生は初めてなんだ……総司くんを感じさせて……んっ」

「春──んっ!」


 結局──最後まで総司の気持ちはおろか、言葉すら届かなかった。


(約260文字削除 行為に及び快感と絶望感を味わう総司)


 総司をもっと感じようと目を閉じている春も、自分たちには見せたことのない春の反応に見入る三人も、誰も総司の表情に気付かなかった。


「おっと。 もう総司も大丈夫だろ? 春を思い切り──」

「きゃっ!?」


 ここまできたらもう照れることもないだろうと、総司も春に色々したいだろうと、彰が手を離した瞬間だった。 体を起こした総司に突き飛ばされ床に倒れた春が悲鳴を上げる。 腰を浮かしかけたところで急に飛んできた春に巻き込まれ、文彦と信雄ももつれるように床に倒れていた。


「いってぇ……いきなり何すんだよ?」


 実際にそこまで痛かったわけでないが、突然のことに驚いた文彦が不満げに声を上げる。

 総司は全員に背中を向けてズボンをはいていた。 文彦の言葉に振り返りもせず無言でベルトを締めると、鞄を拾いドアに向かう。


「おい、ちょっと待てって! いきなりどう──」


 総司の態度に慌てた彰が総司の手をつかむ。 総司は足を止めたが振り向きはしない。

 総司の突然の、わけの分からない反応に困惑する彰の前で、総司は深く、深く息を吐くと彰に捕まれた手を勢いよく振りほどく。


「お、おい……」


 無言の、しかし激しい態度に、彰はわけが分からず困惑が深まっていた。 これから春と思い切り楽しむところだったのにいきなりどうしたのかと、彰には理解ができなかった。

 その様子を離れて見ていた春が、文彦が、信雄が、何が起きたのか分からず、何を言えばいいのかも分からず、ただ呆然として見る中、総司はそのまま走って部屋を飛び出した。 一言も話さず、誰の顔も見ようともせず、飛び出して行った。


「……どうしたんだろ?」


 全員が呆気に取られ、しばし流れた沈黙の中、信雄が呆然と漏らした呟きに誰も答えられない。 重苦しい沈黙が流れ、それを破るように彰が口を開く。


「総司……怒ってたよな?」

「いきなりわけわかんねぇよ。 本当にどうしたんだ?」

「……あたしじゃ嫌だったのかな?」


 うつ向きながら悲しそうに溢す春に、三人は揃って首を振る。


「あんなに夢中になってキスしててそりゃないだろ」

「春のことも好みだって言ってたしね」


 その言葉が単にお世辞だったのかと、そう考えた春の頭に総司に初めて料理を教えた時のことが思い浮かぶ。 自分のことも可愛いと思うか、そう聞いた時の総司の態度──『可愛い』と、その言葉はなかったが、赤くなって顔を逸らしていた総司の態度は言葉よりも確かな答えだった。

 あれが嘘だったのか──そうは思えないがそれ以外の理由は思い付かなかった。


「どうなんだろ……分かんないよ」


 落ち込んだ春に三人は気まずそうに顔を見合わせる。 総司を仲間として迎え入れて楽しい時間になるはずだったのにと、やるせなさにため息が漏れていた。


「とにかくさ、明日学校で謝って話を聞こうぜ。 総司も一晩経てば少しは落ち着くだろ」

「そうだな。 何か誤解があったなら解いておきたいし」


 今はどうしようもないと、彰と文彦はそう結論付けると春の肩を叩く。


「春もさ、とりあえず遅くならない内に帰りな。 総司のことはそっとしといてやってさ」

「うん……」


 文彦に促されて、春は身繕いをすると立ち上がる。 さっきまでは総司を感じて、総司に満たされて、幸せな気分でいた。 それが今は不安と、大事なものを知らずに失ってしまったような空虚感でいっぱいだった。

 漠然とした不安を抱えながら、春は彰の家を出て家に向かう。


──急げば総司に追い付けるかも知れない。

 そっとしておくように三人は言っていたが、すぐにでも謝らないといけないのではないかと思う。 しかし今、一人で総司に会うのは怖かった。 それでも、会ってすぐにでも謝って話を聞くべきではと、煩悶と反問を繰り返しながらも踏ん切りは付かず、結局、春は総司に追い付くことなく総司の家の前に着いていた。


 様子を窺うように玄関を覗くと、総司の自転車が停まっているのが見えた。 総司は家にいる。 春は自転車を降りると総司の家の門の前に立った。

 総司の家のインターホンはカメラ式ではない。 鳴らせばきっと総司は出る。 ボタンに指を伸ばして──春はその手を止めた。 総司に何を言われるのか、想像ができなくて怖かった。 何と言って謝るべきなのか、それも分からずボタンに指が伸びてくれなかった。


 何度もボタンを押そうとして、その度に怖くて引っ込める。 それでも、春は何とか勇気を振り絞るとボタンを押した。

 呼び出し音が鳴り、春は緊張しながら応答を待つ。 だが、しばらく待ってもインターホンから声は返ってこなかった。

 総司が出なかったことにどこかほっとしながら、しかし春の不安はさらに膨らんでいた。 もう一度インターホンを鳴らすがやはり応答はない。

 文彦の言う通り、少しそっとしておいた方がいいのかなと、春は後ろ髪を引かれながら総司の家を立ち去り自分の家へと自転車を走らせた。

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