第14話 届かぬ想い
「結局どういうことなの?」
「俺らも分かんねぇから困ってんだよ」
昼休みの時間、今日は全員が教室に揃っていた。 昨日、総司を仲間に迎え入れるのがどうなったのか、参加しなかった洋介たちは興味津々で話を聞こうとしたが、春たちの様子はどうにもおかしかった。 それに、春と一緒に登校してるはずの総司の姿がない。
浮かない顔で言葉を濁す四人に首を傾げながら、みんな揃ってから、できれば総司もきてから話したいと言う彰の言葉に、みんな怪訝に思いながらも仕方なしに席に着いていた。
次々に登校してきては同じようなやり取りを繰り返し、HRが始まる直前に紗奈が登校してきて10人が揃った。 総司はHRに姿を見せず、結局、昼休みの今に至るまで登校してきていない。
みんなで集まって弁当を食べながら、休み時間では短くて聞きづらかった話をようやく聞けると由美が上げた疑問の声に、彰は正直なところを話す。 総司がなぜあんな態度になったのか、その場にいた誰も分かってないのだからそれ以外に言いようがない。
当事者が分かっていない以上、順に聞いて話を整理していくしかないと、由美はまず最も気になることを切り出した。
「まずさ、何で総司くんは今日きてないの? 何かあったんでしょ?」
「だから分かんないんだよ。 春としてたんだけどさ、急に春を突き飛ばしてズボンはいて出てこうとして……」
「出ていったじゃなくて出て行こうとしたって、その時に何かあったの?」
「いや、慌てて引き留めようと思って手をつかんだんだけど……俺の方を見もしないでため息ついたと思ったら振りほどかれてそのまま行っちゃったんだよ」
「……何かすごい怒ってない?」
その様子を思い浮かべただけで、総司が怒っているのが由美にも想像できた。 信雄が由美の言葉に頷き、
「かなり怒ってた感じだったけど……何に怒ったのかさっぱり分からないんだよね」
「最初からもうちょっと詳しく聞かせなさいよ。 あんたたち、どんな風にしてたの?」
由美の言葉に三人は顔を見合わせる。 春は元気がなくて上手く説明できそうには思えなかった。 押し付け合うような空気が三人の間に流れ、彰が嘆息しながら由美に向かい合う。
「まあ……最初は普通に誘ったんだよ。 実はみんなでこういうことしてて、日曜の歓迎会でもするからその前に少しって。 だけど初めてで照れてんのか恥ずかしがってんのか遠慮しちゃってさ。 帰るからみんなで楽しんでてって言うんだよ」
「それで?」
「だからまあ一回やれば度胸も付くだろうと思ってさ……俺ら三人でちょっと布団に押さえ付けたんだ」
「ちょ──嫌がるのを無理矢理にしたの!?」
「だってよ……あれじゃ日曜の歓迎会なんか無理そうだったし」
「だからってね──」
「待て待て! 俺らも総司が本気で嫌がってるならやめてたよ! 総司もそんな激しく暴れたりしなかったし本気で嫌がってる風じゃなかったんだって」
「そうだよ。 春にキスされて自分から舌を絡ませてたりしてたし結構乗り気に──」
「……ちょっと待って」
弁解に乗り出した信雄の聞き捨てならない一言に梨子が割り込んでくる。
「春。 あんた……総司くんとキスしたの?」
嘘でしょ?──そう言いたげな梨子に、春は総司とのキスを思い出して顔を赤くし唇を押さえる。 その反応に、総司と春のキスを見ていない六人は軽い驚きを顔に浮かべる。
「そこまで本気なの?」
「んっとね……よく分かんないんだけど……総司くんとしようとしたんだけど脱ぐの恥ずかしくなっちゃったの。 だから……総司くんに他のことで喜んでもらえるようがんばらなきゃって……そしたらしたくなっちゃって──」
「めっちゃ本気じゃん」
梨子の呟きに春の顔がますます赤くなる。
「……そうなのかな?」
「どう考えたってそうでしょ」
春たちの今のような関係は中学からだが付き合いは小学校の頃からになる。 性行為自体は先輩や後輩ともごく稀にあるがほとんど仲間内の関係であって、恋愛感情が生まれるようなことはなかった。
そんな春は自分の感情がはっきり分かっていなかった。 それを梨子に指摘されて自覚してしまい、急激に恥ずかしくなる。
「ちょっと待って。 その前に話さなきゃいけないことがあるでしょ?」
由美に話を戻されて、少し浮かれかけた春の気分が一気に沈む。 総司が何にそんなに怒ったのか──自分のことが嫌だったのかと、思いたくはないが不安になる。
「総司くんが本当に嫌がってたんじゃないなら他に何かあったんでしょ?」
「だよな。 俺もそこまでで総司が怒りそうなとこはないと思う。 その後はどうしたんだ?」
洋介が由美の言葉に頷き先を促すと、彰は少し考える仕草をする。
「その後は……まあ二人で夢中になってキスしてたんだけど、春が触ったら緊張してんのか勃ってなかったんだよ」
「それをからかったりしてないわよね?」
「さすがにそれくらいには気を遣うに決まってんだろ。 俺らだって最初はあったんだから」
全員ではないけど何人かは同じ経験をしている。 彰自身もそうだったのは由美が知っているから、その言葉は信用して先を促す。
「で、春がキスしながら触ってたら元気になってさ、ズボンから出してやったんだよ。 そのままキスしながらいじってて──かなりやる気になってたと思うんだけど」
「……まさかとは思うけどサイズのことでからかったりしてないわよね? 小さいとか呟いちゃったり──」
「逆だ、逆。 あんなの見たらこっちが自信なくすよ」
「そんなにすごかったの?」
黙って聞いていた紗奈が彰の言葉に前のめりになって食い付いてくる。 大人しそうな外見だが性的に一番積極的なのは紗奈だった。
「あんなのAVでくらいしか見たことないよ。 太さも洋介と同じくらいあったけど長さが……多分20cm近くあったんじゃないか?」
「マジで!? 羨ましいことだらけだな、おい」
「それは努力してもどうにもならないけどあんたはもうちょっと努力しなさい」
「すごいね、それ。 春と梨子のことがなかったら試したかったなぁ」
総司を受け入れるのを想像しているのか、この辺かな?とお腹をさする紗奈にみんなが苦笑する。
「で、そのまま春が上になって入れようとしたんだけど……その──」
「ちょっと。 何かやらかした心当たりあるんじゃないの?」
口ごもる彰に由美がきつめの口調で問い詰めると、彰は難しい顔で唸る。
「いや、総司が怒るようなことじゃないんだけど……むしろうれしいことのはずなんだけどな。 ただ、今考えるとあの時は春を止めようとしてたのかなって思って──」
「何で止めなかったの? て言うか何してたの?」
「そのな……ゴム、着けてなかったんだ」
「…………は?」
彰の言葉に間の抜けた声が上がる。 全員の視線が彰と春に交互に向けられ、
「だからさ……春と総司、生でやってたんだよ」
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