第二章 ユニークジョブ保持者
第16話
あれからVRMMO内で数日が経過した。
そして遂に、公式大会の開催まで残り20分。ルールは一度死んだら終わりの、全員死ぬまで続くサバイバル。
勝者には称号とユニークジョブ、ヴァルキリーが譲渡される。他にも戦績優秀者には譲渡されるものがあるのだという。
一応パーティは組めないので、俺と使役死霊達は敵として戦わされるらしいが、共闘は自由。
戦闘風景は参加していない人達から見られる。
そして魂の総数は現在16700。全て使い切る勢いで消費していこうと考えていた。
「んでまあ作戦だが、第一に頑張る。第二に頑張る。第三に頑張る。最終的に生き残ったら恨みっこ無しのガチンコ勝負ってことで」
「なんです……その身も蓋もない根性論は……」
ルリィが呆れた表情で睨んでくる。
「俺はすぐ死ぬだろうが、頑張れよ!」
「私は戦闘職では無いので応援させて頂きますね」
ウサメが両手に黄色いポンポンを両手に付けて言う。
メイドという職業は実はNPCに与えられる職業の一つ。その為スキルというスキルは無いということなので、留守番となる。
メルゼの龍という職業もまた同じくNPCジョブらしいが、こちらはバリバリ戦闘職なので参加する運びとなった。
「結構死霊術師の情報が出回ってますので気を付けてくださいね」
掲示板で死霊術師の存在や情報が広まっているのも確かで、治癒撃師の情報や魔砲使い以外のユニークジョブの情報も出回っていたりと、ユニークジョブ調査界隈は盛り上がりを見せていた。
ただし、その一方でユニークジョブは通常職に比べ、他のプレイヤーとの戦術の情報交換や研究ができない為、弱いという意見もある。
「本当に怖い人は倒してもいいの?」
ステラが怯えながら問う。
「ああ、見境無く倒しちまおうぜ!」
これは大会だ。勝てば勿論勝つという至極シンプルなルール。
ステラの職業は
一番期待している。
「……もうすぐ始まりますよ!」
カウントダウンを示すウィンドウが出てくる。
――カタッカタッと進んでいき……
『スタート!!』
気が付くとそこは、公式大会専用森林エリア呼ばれるフィールドに足を付けていた。
位置は――屋外。木や自然に囲まれた開放的な空間だった。
「早速……」
自分が現在広げられる最大範囲までグレイヴヤードを展開する。
参加プレイヤーは何百万人といる為、この周りにも何百と言う敵を表す点が表示されていた。が、殲滅することに変わりはない。
スペクターマップの練度が上がった為、シャドウコフィン内に居なくとも使えるようになり、敵の位置まで把握が可能になった。
更にリアニメイトの召喚範囲が広げたグレイヴヤードまでなら可能。更に魂を5つ使用することで上級アンデットの召喚が可能となり破格の性能と化した。
的確に上級アンデットを送り込み、この辺り一帯にいるプレイヤーを蹂躙して行くこと30分。
欠点と言えば、グレイヴヤード外に逃げられてしまえば、アンデットが追いかけて行かないことだ。そのため、低級アンデットで囲み、上級アンデットで潰す。と言う少々魂を喰う方法で確実にキル数を稼いで行った。
ふとキル順位を見る。
「キル数は658!? 現在キル順位は……それでも6位か」
暫定一位は、なんとあの時メルゼに敗北した魔砲使いの女性だった。既に千人を越えている。
因みに二位がステラとなっている。相当別のエリアで暴れているらしい。
ただし、キル数では無く最後まで生き残った者の勝利となる為、そこまで必要な数値だとは言い難い。
生き残ったアンデット達を集めてから森を出る。
するとフィールド名が平原エリアへと変わる。平原らしく、見通しの良いエリアとなっている。
このエリアでも、スペクターマップ上に現れた相手を近付かせることも無く、軽々と上級アンデットが倒していく。もう居ないと判断すれば、別のエリアにアンデットの大軍を引き連れて向かう。その中には変異種も混じっていたが、ミントやメルゼの様な会話が成立するような知性は持ち合わせていなかった。
あの二人はかなり珍しい変異種の中でも更に珍しい類である事が分かった。
その後は、万事を期してシャドウコフィンの中に入りアンデットに運んでもらう。こうなると外の様子は分からなくなるが、とにかく生き残ればいいのでつべこべ言っていられない。
自分で言うのもアレだが、これは動き攻撃する不滅の要塞。このまま籠城さえしていれば負ける未来が見えなかった。魂の総数にも現状かなり余裕がある。
相手がグレイヴヤード外から攻撃出来て、尚且つ長射程の超威力攻撃でも持ってない無い限りは死にはしない。
――筈だ。
だが、どうしてか周りにいるアンデットを示すアイコンがポツポツと消えている。スペクターマップ上には記されてない何者かが、攻撃しているとしか考えられなかった。
「対象をグレイヴヤード内に入れる! 攻撃されている方向へ進めッ!」
そう指示を出すと、一斉に東に向かって動き出した。
幾つかのプレイヤー反応を確認しては、そこに上級アンデットを何体か送り込み倒す。だが、それでも周囲にいるアンデットらは何者かの攻撃によって消えていくばかりだった。
俺は考えを改め、攻撃を行っている前方を覆うようにアンデットの壁を作り出す。非常にリスキーだが、こうでもしない限り正体不明の長射程の前にひれ伏すだけとなってしまう――行動が必要だった。
「よし。準備は整った」
アンデットとシャドウコフィンを盾にして、俺は外に出る。度々補充もしたし、敵の位置も把握した。
猛攻の正体は青白い魔法攻撃。即ち、MPに極振りした最初のプレイヤーが手に入ることが出来るユニークジョブであり、過去に一戦交わしたことのある――魔砲使いの攻撃であると判明した。
前とは比べ物にならないほどの威力と、MP量。俺だけが成長した訳では無い。プレイヤー全員が確実に成長しているのだ――
そして、大会はそんな成長を知らしめ、確かめる場でもある――
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