第14話

「……ふうっです! この扉の向こうですね!」


 シャドウコフィン内から向かう先を指示して、やっと二人の反応がある場所まで辿り着く。

 扉の大きさ的にシャドウコフィンが入り切らないので、一旦解除する。

 レベルを確認すると、19に上がっていた。もうすぐで新しいスキルが手に入る頃合だ。


 扉がそのままでは開かないことを確認して――


「よし、では戦闘開始だッ!」


 その合図を機に、ルリィが杖で扉を殴り開け、一斉に突撃する。


 その先には――


「ステラちゃんはどうしてこんな所にいるの?」

「ステラね、呪われてて……この森から出られな――ひゃああ!?」


 二人の姿と、半透明な少女が居た。周りは部屋中古びた玩具で一杯だった。


 半透明な少女は悲鳴を上げると、消えていなくなってしまう。


「御用改めであるです! あれ?」「我が極技――しかと……あれ?」


 気合を入れて突入したものの、不発に終わる。


「どうしてクレるんダ!! ステラが怯エテ隠レテしまったではないカ!!」


 ぷんすかと怒るミントをなだめるように、ウサメが肩をポンと叩く。


「まあまあ。助けに来てくれたんですよね?」

「そうだが……さっきのは?」


 ウサメが部屋に角に手招きしだす。


「デステラーことステラちゃんです。攻撃してこないから大丈夫だよ〜」


 そうウサメが声掛けをすると、ウサメの背後からひょっこりと不安げな表情をした顔を見せる。


 初めにちらりと見えた半透明の少女だ。


「怖いお面!」


 顔をひっこめてしまう。

 この服装とこの仮面は確かに怖い。更に大鎌まで持っていると来たら命さえ危うい。


「あー……これでいい?」


 仮面を外して見せた。


「ぎゃあああああ!! 死んでるぅうう!?」


 透明になってしまった。

 近くにゾンビとか、他にも骨だけの奴もいるのに俺だけこの始末。

 顔色は確かに最悪で、驚かれるのもわかるが……流石に傷付く。


「いい死人だよ!?」

「やっぱりあの人死んでるよぉお!」


 こんなに怖がられるとは。


「えっと……デステラー討伐の件は……」

「こっ……殺すのですか!?」

「あぁっ! えっと……アレだよ! 【恐死の亡き声】ってアイテムが欲しくて……」


 閃いた! と言わんばかりに眉を上げ、スゥーっと玩具の山に向かう。

 そこで瓶を取り出し――


「キャアアアアアッ!!」


 叫んだ。

 絶叫だ。


「ふうっ!」


 スッキリとした清々しい表情で瓶に蓋をし、ウサメに渡す。


「あの死人さんにあげてください」

「えっ……あ、うん」


 そして、手渡される。

 アイテム名はしっかりと【恐死の亡き声】だった。


「死人さんが死霊術師……で間違いないですよね?」


 今までとはまた別の、低いトーンで喋り出す。


「まあそうだが……」

「――では死んで下さい」


 唐突過ぎるその事に戸惑いながらも、足元が紫色に光り出した事をきっかけに、背後に下がる。

 すると、一本の光の柱が立ち、消える。その地点の天井は黒く焼け焦げていた。

 その紫色の光は、攻撃する為の予備動作だとすぐに分かった。


「――ッ!」


 ミントとウサメが天井から吊るされた檻の中に捕らわれていた。


「なんだこの檻ハ!?」

「ど、どうしてこんなことをするの!? ステラちゃん!!」


 ミントが殴っても蹴っても噛んでも壊れない程頑丈な檻。出る術はデステラーを討伐する。それ以外に無いだろう。


「今居る死霊術師を殺して……ステラが貴方を操って……そしてステラが本物の死霊術師になるんだ……!!」


 そう言い、どんどんと身体が肥大化していき、人の原型を保たなくなったところか、大鎌を持った死神に変貌する。

 ダンジョンボス討伐って言ったところか。


「残り魂は――1280。良いぜ……やろうじゃねぇか!!」


 仮面を再び付け直し、大鎌を構える。

 既にメルゼは40の魂を喰らい、巨大化とレベルアップ。ルリィも戦闘態勢に入っていた。


 スケルトンとゾンビが先陣を切って、デステラーに突っ込む。

 が、しかし大鎌の一振でそれらは蹴散らされた。その隙に、メルゼが突撃する。


「グガァアアアアッ!!」


 ――轟音。踏み込む度に起こる地響き。巨体から放たれる威圧感。

 己にある全てを持って相手を蹂躙せんとする。

 攻防が繰り返されるが、それでも有利を取れている訳ではなく、互角――以下。


 幽霊のようだったが一応物理攻撃は通ってはいたものの、有効的だとは言い難かった。


「白魔黒様! トランスをつかってください! 戦況が変わるかもしれません!」


 トランス……確か味方の強化系スキルだったな。これと言ってチュートリアルでは省かれたコイツだが、確かに今なら!


「発動! トランスッ!」


 メルゼの身体が黒い霧に覆われ、紅い二つの光が薄らと現れる。


「――!!」


 

 紅い残像。濛々もうもうと立ちこむ黒い霧の中、その僅かな光が荒ぶり、敵を喰らう。

 そして、戦況は一気に有利になるが、仕留めきれず――


「――はぁっ……はぁっ!」


 ここで、トランスの効果が切れる。


「一旦戻れッ! 消耗が激しい!」


 中級アンデットを10体召喚し、向かわせる。


「私を忘れないで下さいです!」


 メルゼが引き下がろうとするその瞬間、切り替わるようにルリィが重い一撃を叩き込む。それに続くように中級アンデットが数で押し切ろうと奮闘する。


 流石アンデットに効く回復使いと言うべきか、相当なダメージを稼いで行った。


「行ケル! 押セェ!」

「ハイスケルトン! そこ! こう捻りを加えて!」


 捉えられたお二方は相当楽しそうに観戦していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る