第13話
「あれ? ミントらは……?」
「む……気配がしませぬな?」
小屋に入り地下に繋がる道を進むが、ミントらはそこに居なかった。
「先に進んだか」
そこまで入り組んでいるようでもないので、パパっと追い付けばいいだろう。
――ウグッ……エグッ……
「ひぃっ! 主ぃ!」
メルゼが、俺の背中に隠れるようにして身構えた。
流石に俺やメルゼだけでは戦えないので、リアニメイトで戦力補強をし、時折聞こえるすすり泣くような声に怯えながら進んだ。
「……ルリィ?」
ほんの少し進んだ先にちょこんと座って震えているルリィの姿があった。
それと同時に、すすり泣く声の正体がルリィであると分かった。
「白魔黒さぁあああんっ!!」
仮面を取り、顔をくしゃくしゃにして、泣きながらこちらまで寄ってくる。
「あのっ! そのっ!」
ミントとウサメは居ないのか? 一本道であるため、はぐれたとは考えにくい。
「わ、わかった。何が言いたいか分かったから落ち着いて深呼吸しようか」
「すぅ〜……はぁ〜……」
胸部が膨らんでは縮みを繰り返し、落ち着きを取り戻す。
その間にメルゼが犬の格好を取り、地面に鼻を付けていた。
そんな事をしても犬みたいに鼻がよくなるわけ無いだろうに……。
「匂いがここで途切れている!?」
「骨なのに分かるのか!?」
犬の姿を取ればそんなことも出来るのか!?
「そうなんです! その、デステラーと思わしき魔物が出てきて二人をッ!」
連れ去ったという訳か。それなら何となく察しがつく。
にしても一人でここにいたなら怖かっただろうに。
「まあする事はたった一つ! 助けるぞ!」
「は、はいです!」
自分の頬を思い切り叩き、気合いを入れたようだ。
俺が出来ることと言えば、グレイヴヤードの距離を増やして、シャドウコフィン。その中でスペクターマップを使えば恐らく、二人の位置が示される。それを頼りに進むぐらいだ。
だがLv1のメルゼや、攻撃手段がアンデットにしか無いルリィを野ざらしにするのも危険なので、リアニメイトで軽く戦力補強をした。
「んじゃあ俺はシャドウコフィンの中に入って指示を出すが……いいか?」
「かしこまりましたです!」
「うむ。我らとアンデット達に任せてくれ!」
ゾンビやスケルトンに、前後の戦闘と棺桶運びを命令する。
案の定、此処とは少し離れた、意味ありげな部屋に二つの反応がある。そこに向かえるように指示を出した。
「スペクターマップって凄くと便利ですね!」
暫く歩いた時に、ルリィが興味津々に聞いてくる。
「あー、確かにそうだな。障害物までは記されないから、こういったダンジョン探索や仲間の捜索にはもってこいだな」
「……私は、白魔黒さんのお役に立てていますですか?」
次は元気が無さそうに問い掛けてくる。
「充分に立っているよ。ほら、アンデットに対して有効な攻撃手段を持っているじゃないか」
「そ、そうですけど……私、ヒーラーですよ? それなのに一回もヒーラーとしての役割を果たしていませんです……」
あ。なるほど。アンデットへの回復魔法は全て攻撃魔法になってしまう事を懸念しているのか。
「少し悲しいのです……」
充分に自分の力を活かせる場面というのが、アンデット相手か、兎人であるウサメだけとなると、何かと寂しいこともあるだろう。
「じゃあこんなのはどうだ? プリーストからは遠く離れるが、自分も前に出て杖で殴る。ダメージを受けたら自分に回復を施す!」
「で、ですが私のステータスでは……」
このVRMMOには掲示板機能がある。そこでかなり数多くの情報を得ていたりもするわけだ。
「ステータスというのは初めのステータスポイントだけじゃなく、努力でも育つんだとさ。だから頑張って物理攻撃力、即ちSTRを鍛えたら、自分の為に回復することもできるんじゃ無いかなって」
無言が二、三秒程続き、ルリィの吐息が零れた。
「自分の傷は自分で癒せる、物理プリーストって事ですね!?」
とても明るい声で、解釈した事を確かめるように聞いてくる。
「そうだ! まあステータスポイントでSTRに割いた専門職の剣士等には劣るだろうけど、このパーティなら充分に活躍できると思うぞ」
「で、では物は試しですッ! うおらっしゃあい!」
ミントの掛け声でアンデットを殴る低く鈍い打撃音が鳴り止まない。
味方のアンデットまで殴ってないかと心配になるが、スペクターマップで見る限りは問題は無さそうだ。
「我が主よ、ルリィ殿……何かに目覚めてしまっておるぞ……?」
気になってシャドウコフィンを解除して、見てみる。
「らっせーい! うぉっせーい! 滅せよ、ウルトラダイナミックぶん殴りぃ!」
身体から何かよく分からないエネルギーを発しながら、それでも襲いかかってくるアンデットを片っ端から撲殺していた。
味方のアンデットは震えて後衛に徹している程、ほぼルリィが倒している
幽霊系の実態の無いアンデットも、余裕で殴って倒していた。恐らく、杖に回復魔法を常時発動しているとか、そういう類だろう。
「……プリーストってバーサーカーなのか?」
「……元々備わっていた才能を引き出した。という事でしょうか。にしても――」
また、前方を確認する。
やはりと言うべきか、暴れ回っていた。
「なにこれ気持ちがいいですぅぅ!」
――その姿はまさに、血に飢えた獣。
――虐殺と殲滅を好む戦闘狂の様に、俺達の視界に写った。
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