第12話

 死樹の森に侵入する。

 そこは、陽の光さえ届かないような暗い森の中。昼夜が分からなくなる他、その森自体も複雑に入り組んでおり、道は勿論のこと、出てくる魔物も相当な物だった。


「ウオラッシャーッイ!」


 だが、出てくる魔物全てを前衛であるミントが、殴る。蹴る。を効率的にこなし、他の魔物の追随ついずいを許さない。

 もし仮に、前線を越えよう物なら――


「アルティメット・ギガント・ヒールですっ!」


 アンデットは聖属性を弱点とする。その為、ルリィの回復魔法で塵と化した。

 因みに、ヒールの前の単語達にこれと言って意味は無いのだが、気持ちの入れ方次第で相当効果量が変わってくるらしく、ウサメは魔法の効果量や防御力に作用するMND値が多い者程、精神が強いのかは不明だが、変わり者になるのだそうだ。その場合はその人のやり方を尊重するのが一番だという。


 ――因みに、ヒールと言っているが、厳密にはヒールでは無いらしい。


 暫くの間、森の中を歩き続ける――

 ――そして――


 戦ってもいないのに、みるみるうちにレベルが上がっていき、遂にスキルが獲得されるLv16へとなる。


『死霊スキル リバーサルを獲得しました』


 念願のウィンドウが開き、通知される。

 本来なら一発くらったら死ぬ。更にレベル全損失という多大なハンデを負いながらも、心強い味方のお陰でここまで来れたことを喜ばしく、また、感謝していた。

 その喜びを、腕を突き上げる動作で示した。


 レベルアップの喜びを……こんなにも感じられるとは。

 実は殆どなんもしてないんだが。


「オメでとー!」


 そう言いながら抱擁してこようとするが、間一髪で避ける。

 抱きつかれたら死んでしまうからな……。


「ぷゥ〜!」


 頬を膨らませたって仕方がないでしょうが!

 俺だって抱きつけるモノなら抱きつきたいさ! でもね! 今はそう言う葛藤から逃げてレベルアップに務めなければならないんだよ! 許せ!


「わぁっ! 新スキル獲得おめでとうございますです! えっと……スーパー・デストロイ・ノヴァでしたっけ?」

「流石、我が主だ! それと習得した新スキルは骸魂爆……そうだろう!?」

「とりあえず二人してかっこよさそうな単語を連ねるな! 習得したのはさっきもウサメが言った通りに、リバーサルだよ」


 両者、ちぇ〜っと顔をしかめだす。

 そんな顔をされても……。


「新スキル獲得おめでとうございます! リバーサルの説明はご所望ですか!?」


 ウサメが目を輝かせて顔をこれでもかと近付けてくる。


「あ、あぁ! 頼んだ!」

「こほん。リバーサルは、受けた攻撃分のダメージを、魂一つを消費して返す技です。HPが1しかないので、発動条件は満たしやすいですよ。しかも回避不能!」

「それってつまり……」


 その本来受けるはずだった量。という言葉の解釈を間違えなければ――


「ほぼ即死させられます! 死霊術師は耐久系ステータスも1。ですが、その1が輝けるのがこのリバーサル! 但し、一日に一回の回数制限があり、リセットは深夜0時にされます」


 HP1である為、死ぬのは勿論のことだが、耐久力を上げられるステータス類も1。つまり耐久力が無ければただの素手での殴りでも相当なダメージが入ることになる。

 流石に強過ぎるからか回数制限が設けられていた。が、強大すぎる相手に対抗する手段としては、これ以上ない程に有効的だと言える。


「それと……本当に私の知らないスキルがあるんですね……」


 困惑した表情でジッ……と見る。

 おそらく、カースとソウルエクスプロージョンのことについてだ。


「カースは……相手にかけてから五分待てば殺せる呪い系のスキル。解除法は聖水。ソウルエクスプロージョンは……ふむふむ。死亡時に魂を消費して爆発できる。と」


 物珍しそうにウィンドウを見て、理解したようだった。


「死霊術師はかなり最初の段階に作られた職業なだけあって、変更点も多そうですね……私の知らないことも多そうです」


 最初の段階でこんなにも弱く設定されていたのかよ。

 だが、呪いの装備で追加されたスキルのお陰で、一切自分からは攻撃出来ないという訳でも無いことがわかった。

 リバーサルやソウルエクスプロージョンはどちらかと言うとカウンター型のものだという認識を持った方がいいだろう。


 俺達は更に魔物を討伐しては森を進んでいく。

 すると、ある荒んだ小屋の前まで辿り着いた。


「ここが、デステラーが潜むダンジョンの入口です!」


 まさかのダンジョンだった。


「じゃあ進モウ!」


 ミントが小屋の扉を蹴破り、堂々と進む。


「出発進行です〜!」


 その後を追ってルリィとウサメが進んでいく。

 俺は念の為グレイヴヤードを発動させてから、メルゼと共に進んだ。

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