第11話
「……で、ヤル気にナッタの?」
「まあそうだな! 折角の大会だ。それにユニークジョブも気になるところだからな!」
「ヴァルキリー……凄くかっこいい響きです!」
戦天使、ヴァルキリー。俺には合わないだろうが、プリーストであるルリィなら何かと適任だろう。光属性っぽいし。
それに指導熱心なウサメもいる。なんか朝方、拳闘士のスキルやら何やらを教えていたからなぁ。
「ヴァルキリーの説明はいりますか?」
「いや……いいです……」
やっぱり知ってはいるんだな。
死霊術師の獲得そのものがかなり遠い未来の話であるように作られている可能性すらある。
そもそも解放条件が『実際の身体が死ぬこと』だもんなぁ。
「はーい!」
□
俺らは、街の人が寄り付かない様なところにある骨董品屋に入る。
ウサメが役に立つある物を買いたいのだという。
「らっしゃい……」
さながらそこは呪術やら、そう言った類の物で跋扈していた。
骨董品店……なんかではなさそうだ。
店長は店長で奇妙な雰囲気を醸し出している。
「呪いの装備、あります?」
ウサメが単刀直入に聞いた。
「ありますぜぇ……装備枠が無くとも、装備出来る……呪いの装備品がねぇ」
ふひひっ……と不気味に笑ってみせる。
街の住民は全員NPC。だからかこういう内部的な、システム的な事も言えるのだろう。
「じゃあそれの死霊術師専用のやつ下さい」
「うさ耳嬢ちゃんが装備すんのかい?」
店主がガサゴソと戸棚を漁る。
「いえ、こっちの顔色悪い人が」
「ん? あぁ……しっかり死人だねぇ? んじゃあ……オマケしてやるかぁ」
そう言って投げつけられたのは、全体を覆うような真っ白な仮面に、目の位置に穴が開けられただけの簡素な物。まじまじと見ていると生気を奪われてしまいそうな、そんな不気味さを感じる。
そしてもう二つ。禍々しい、先がボロボロなローブと、刃まで黒い大鎌だ。
「全部で金貨200枚と銀貨3000枚だ」
今の所持金は金貨40枚、銀貨840枚……全然足りない!
「足りな……」
「まあ聞け……死霊術師の旦那。ある魔物を倒して素材をくれりゃそのままそいつをやるよ」
まさか……クエスト発生フラグ?
「その魔物というのは?」
間髪入れずにウサメが聞く。
「ん? 結構食い気味だねぇ……。死樹の森に現れる、ボス級モンスター……その名もデステラー。そいつの【恐死の亡き声】ってドロップアイテムさ」
ウサメは、コクリと一礼をして出ていく。何が何だか分からない俺らはただ後を追った。
「今のは死霊術師のクエスト発生フラグです。チュートリアルをした死霊術師でないと辿り着けない……だそうですよ? それと、私はジョブ等の情報は持っていますが、クエスト発生フラグの情報はこれしか持っていませんので……」
「あっ……いや別に……ありがとうな」
「いえいえっ! わ、私はその……白魔黒様を支えるメイド……ですので!」
これらの与えられた装備を、抱えたまま、今までメニュー画面の選択肢には無かった呪い装備の欄を開く。
すると、やはりと言うべきか装備枠が出来ていた。
「これって装備しても問題ない感じで?」
「大丈夫ですよ〜! 基本的に呪いの装備は性能が高い分、ステータスをいじってきます。ですが、死霊術師はステータスをいじられても1固定なので危害は無いのです! それどころか〜! あらよっと!」
勝手にパパパっと、俺の装備枠に呪いの装備をセットする。すると、手に持っていたそれらが全身に装備されて行った。
「わあっ! なんですかそれカッコイイですっ!」
「我が主に相応しい……死を司る死神のようだ!」
かなり二人には高評価のようだ。ミントはふーん、と特に変わりない表情をしていた。
その後、スキル一覧を見せられる。
そこには今まで無かったスキル。デスサイズとデスアクセルが追加されていた。
「なんだ……これ?」
「武具スキルっていう物です! 切り付けた際に消費魂分に比例したダメージを固定で与えるデスサイズ。踏み込んだ際に消費魂分に比例した距離を一瞬で縮めるデスアクセル。二つとも強力です! しかもスキル枠を圧迫しません」
なんとなく、この大鎌とローブによるもの……というのは分かる。
しかもなんと攻撃用スキルだ。遂に俺も戦える日が来たという事か……。棺桶の中で掲示板を見るだけのVRMMOだと思ったが……救われたぁ……。
更にいえば10個しかないスキル枠を圧迫しない。というのも魅力的である。
「因みにお面は装備するだけで【魔物の魂】が40秒に1つ手に入る代物です。死霊術師には欠かせないと言っても過言では無いですね!」
「だが別に魂なんて100を超えているし別に……」
ウサメの目が何時にもなく鋭くなっていた。
「魂稼ぎは確かに簡単です。ですが、それ以上に戦場が激化すれば魂の消費も激しくなります。ので! しっかりつけるように!」
かなりの圧で諭される。
「は……はい」
確かに今の消費量はそこまでとはいえ、奥の手であるメルゼに大量の魂を割くことを考えたら、どれだけ魂があろうが足りないやもしれない。
「ゴ主人? 今カラそのデステラーを倒シニいくノカ?」
「まあそうなるな。確か場所は死樹の森……か。道案内出来るか? ていうかルリィ……それ、どうしたんだ?」
キラリと眼を輝かせて、別の仮面を手に持っていた。が、特に呪いやそういった類のものは感じない。
「私達も装備しましょうです! カッコよくないですか!」
「オッ! イイな! 私も買ってクル!」
「ずるいですよ! 私も買います〜!」
……一体何に感化されているのやら。
「使役死霊と主の道具収納スペースは共有されているぞ……? つまり、通貨等も……」
元々真っ青だが、より顔面が真っ青に染まるのを感じる。仮面をしているから見た目上は真っ白ななのだが――
「えぇ!? ちょっと待てぇい!」
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