第10話
せめてもの救いにこういったチャットツールである掲示板があるのは助かる。
俺だって剣士になれりゃあVRMMOの世界で暇になることなんて無かっただろうになぁ。
「主よ、暇なのか?」
「そうなんだよ暇なんだよ」
暇過ぎて一人ジャンケンしちゃうぐらいには暇なんだよ。
三人は爆睡しているし……寝なくてもいいのは俺とお前ぐらいだ。
「では主の為に我が一芸を披露しよう!」
「お? マジ?」
そう言うとスカルドラゴンは飛び上がり、空中で一回転。そして……
「ワンッ!」
ドラゴンから骨を上手く組みかえて犬に変形した。
「すげぇっ!?」
「まだまだ出来るぞ!」
更にまたもう一回転。
そして、鳥、蛇、ましては人間まで再現する。だが元が小さいので、再現しても小さい。
「器用だなぁ」
「ふふんっ」
骨だけなのでドヤ顔しているのか分からないが、多分ドヤ顔をしているのだろう。
「そしてだな、擬肉付きというスキルを使えばこの通り」
骨だけだったその身体を覆うように霧が発生し、それが凝固して身体が出来上がる。
当たり前だが素っ裸だ。しかも女性の顔付きで、手乗りサイズ。
足元まで付くぐらいの長いストレートヘアが特徴的な、鋭い三白眼の少女に変貌した。が、それは顔だけを考慮した結果であり、性器の様なものは確認出来ないため、どちらでも無いというのが回答だろう。
また、髪色が下に行くにつれてピンク色の濃さが増しており、その髪で全身を覆える位はある。
「凄いな。こんなスキルまであるのか」
「だがしかし、攻撃なりなんなり……それも一ダメージでも受けようものなら解除される。所詮は仮初の身体なのだ」
一撃で死んでしまう俺と同じく、維持する為には細心の注意が必要……という訳か。
ただ、見掛け倒し位には使えそうだな。
「さて、これを踏まえてだ我が主。そろそろしっかりとした名前を付けて欲しいものだが……」
手の上にちょこんと座り、こちらをジッと見てくる。
「うーむ……確かにこの格好ができるのにスカルドラゴンってのもなんだか変だしなぁ」
種族やレベルは変わってないのだが。
「そうだなぁ……犬にも鳥にも蛇にもなれる……ましてはドラゴンや人間にまで……」
「じゃあメルゼちゃんね!」
「うわっ!? ウサメさん!?」
急に起きてきては、にんまりと前に立っていた。
「もうウサメでいいですよ〜! で、名前ですよね!? メルゼちゃんはどうですか? メルゼちゃん!」
決めるも何も、勝手にメルゼでもう固定されてるじゃねぇか。
「ちゃ、ちゃん付けは……その……恥ずかしい」
可愛いかよ。
スカルドラゴン時はほんと怖かったのに、この状態だとただただ可愛いって……ただ男でも女でも無さそうなんだよな。そこがかなり悔しい。
「まあメルゼでいいんじゃないかな?」
「主が……そう言うなら……」
案外ちょろかった。
これを機に、名前がスカルドラゴンからメルゼへと変わっていた。
「ふゎあ〜。よく寝ましたよ」
大きな欠伸と大粒の涙を零す。
「ん? まだ此処じゃ深夜帯だぞ? もうすぐ日が昇るが」
「兎は寝たり起きたりを繰り返すんですよ〜。自由なんです」
「メイドなのに?」
「自由なんです」
……キッチリと時間を守るイメージがあるメイドに、対象的な自由奔放な兎の個性が混じってしまっているのか。
「それで、その新しい子は?」
「あぁ……さっきスライム狩りをしてた際に、中級アンデットを召喚したら変異種が出てきた。って感じだな」
「人にしか見えないですけど」
不思議そうにメルゼをジロジロ見ている。すると、手のひらから飛び降り、ドラゴン状態に戻った。
「ぎゃあっ!? ス、スカルドラゴン!? で、でもちょっと可愛い?」
そう。中々ちまっこくて可愛いのだ。
パタパタと一生懸命飛んでいるのがもう。
「ゾンビガールといい、スカルドラゴンといい……白魔黒様はやはり凄い方……という訳なんですね!」
「そうなのか……?」
なんだか死霊術師を続けるモチベーションが上がってきたぞ……!
もっと魂を集めて、練度を高めて……色々できる事があるはずだ!
「我が主がそこら辺のへっぽこと同じ訳が無かろう!」
何故お前がドヤ顔をする。いや、いい。掲示板を見漁ってた限りじゃユニークジョブっていうのは相当珍しい類だという。
その珍しいヤツの中に俺がいるわけだ……。
今、世間で確認出来ているユニークジョブは
が、それに近しいものとして、始まりの平原で骸骨龍を指揮する顔色が悪いアンデットが出現した。ボス級エネミーが出現した。等とかなり噂されていたのも事実。魔砲使いが交戦して敗北したという情報も流れていた。
「ほほう。中々の有名人ですね?」
「まあ名前や職業は広まってないんだが」
ウサメも掲示板を覗いたらしく、目を丸くして驚いていた。
「プレイヤー説もありますね」
「まあプレイヤーだからな。一応こんな身なりでも……」
だが、確かにこの見た目じゃアンデットだ。いつ殺されるか分かったもんじゃない。
それに、折角Lv13まで上がったんだ。スキル解放されるまでレベルを上げてみたいという欲もある。死なないように立ち回りたい。
……そういえばチュートリアルでカースやソウルエクスプロージョンについて触れてなかったな。
「ウサメはチュートリアル以外の死霊スキルって知っているのか?」
「一応知ってますよ!」
「カースとか……ソウルエクスプロージョンとか?」
「……? 知りませんよ? なんですかそれ」
首を傾げ、耳をぴょこぴょこ動かす。
ビショップ等のスキルも知っているウサメでも知らないスキルか……。
「私の知っているレベル獲得死霊スキルは、Lv16でリバーサル……Lv20でネザーワープ……Lv24で……」
「待て待てッ! 解放してから教えてくれ! な?」
スキルを増やすっていう楽しみが減っちまうッ!
「あっ! すいません……」
「なあに、謝ることでは無い」
ただ……一回ダメージを受けただけで死ぬと言うのにしっかりレベル技が設定されているのか。
――ピコン
「お……?」
運営からのお知らせにビックリマークが付く。
内容は、第一回
いつかはあるだろうと思ってたが、まさかこんなにも早く告知されるとは。
「優勝賞品は……限定武具と『第一回王者』の称号……更にユニークジョブ
なるほど、ユニークジョブをここでも取れる。ということか。
「……さぁて、大会に向けて頑張るか!」
「はい! 白魔黒様!」「勿論だ! 我が主!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます