第6話

「次はグレイヴヤードですね。発動は初めてですか?」

「あー……初めてだな」


 どんなスキルなのか想像はつかないが、何か禍々しいのだけは理解出来る。


「でしたら最初は発動させやすい形で発動して感覚を掴みましょう」

「じゃあ……発動! グレイヴヤード!」


 すると、俺を中心として、地面が円状の黒い霧に覆われる。

 決してその霧は円の外には出ることがなかった。


「グレイヴヤードはフィールド型のスキルで、この中に入っている私達のような存在はステータスが大幅に上昇するんです。距離を魂を使って伸ばすことも出来ますよ。それにしても……何だか居心地がいいですね」


 ウサメは何処か嬉しそうだった。身体に馴染むのだろうか。俺は特に変わった感じはしないが。

 だが、ゴブリンは恐れて近付かなくなっていた。


「アンデット以外になら虫除けのようにも使えるんですよ」


 凄い牙を剥き出しにして、怯えていた。襲われても困るのでそのままで。


 後はこのスキルの無詠唱発動の感覚を掴み、伸ばしたい距離まで伸ばせるようにしたり、制限時間を表示したりと、理解を深めた。


「次はシャドウコフィンですね!」


 あれを習得したらこれを習得しろ。と言わんばかりに次から次へとスキルを覚えさせられる。


「お、おう! 発動! シャドウコフィン!」


 立っている位置の両脇から、棺桶の蓋と本体が俺を挟みこんだ。

 辺りは当然暗闇。 だが、腕を伸ばして回転できるほどにはスペースが確保されている。案外広い。


「なんだコレすげぇ!」


 意外と窮屈じゃない。それどころか結構居心地がいいのだ。


「シャドウコフィンは受けるダメージを肩代わりしてくれるんですよ〜。また、これがある事で使えるスキルもあります。折角なのでその感覚も掴んじゃいましょう! スペクターマップです!」


 少し休みたいとも思ったが、こんなに教えるのに一生懸命なのに、俺がそれに答えないなんてこと出来るわけがない。


「発動! スペクターマップ!」


 するとウィンドウが開く。が、それは今までの長方形型の物とは違って、円状の物。

 中心には棺桶のマーク、その隣には黄色の点が記されていた。


「……これは?」

「スペクターマップはグレイヴヤードの範囲内にいる敵を記したり、味方の位置を記したりできる便利なマップです」


 ウサメさん曰く、これはこういうものだと理解していればいい類のスキルらしい為、内容だけ覚える事にした。


「次はなんだ?」


 シャドウコフィンの中に入ったまま聞く。

 追加で一つ魂を使ったらふんぞり返れる程大きくなった為、そのまま活用しているのだ。


「次はトランスですね! これも効果さえ覚えていれば問題ありません。味方強化だと思ってください。はい次!」


 かなり適当にあしらわれたな。

 可哀想なトランスよ……。


「死霊術師の大大大大大本命とも言えるそのスキルの名は〜……リインカネーション! 直訳して転生! ひゃーっすごい!」


 かなりテンションが高めだった。


「……と言うかそろそろ出てきて下さいよ全く。寂しいじゃないですか」


 ゲシゲシとシャドウコフィンを蹴られているのが何となく伝わる。

 仕方がないので解除することにした。


「で、リインカネーションはどんなスキルなんだ?」

「まあまあ慌てないで下さいよぉ! すんごいんですから! ほんと!」

「何がどう凄いんだよ……」


 その凄さとやらを教えて頂きたいものだ。


「今【自分の魂】は何個ありますか?」

「5個だが?」


 自分の魂なんて何に使うのかと思っていたが、まさかこのスキルに使うのか?


「おぉ! でしたら丁度良かったですよ! とりあえず発動してください!」

「発動! リインカネーション」


 言われるままに、発動する。

 すると、驚いた事にキャラクタークリエイトと書かれたウィンドウが出てきたのだ。

 そしてそれはどうやらウサメさんにも見えているらしく、頬をくっ付けてまで覗き見てきた。

 ほんのりいい香気を放っている。それだけでなく、胸が腕に当たるのがなんとも言い難い幸福感を呼び覚ました。


「リインカネーションは【自分の魂】を5つ、【魔物の魂】を1つ消費して発動するスキルです」


 そう言って、ウィンドウを勝手に操作する。

 既に主導権はあちらにあった。


「私みたいなNPCを作れちゃうんですよ。性格だけは魔物に依存するんですけどね。職業は最初の5つと、白魔黒様が知っている職業だけとなります。ステータスポイントの割り振りも出来るので、本当にプレイヤーとおんなじ感じで作れるんですよ〜」


 付け加えてそう言い、長い間こうしようかああしようかと悩みに悩んで、たまにこうしたらいいんじゃないかとあれこれ口を出して、やっと完成した。

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