第4話
あれから少しして始まりの街に戻り、宿屋を見付け今に至る。
顔色が悪い青年と、緑色の肌をした美少女。瞬く間にその噂は街中に広まっていた。
「ゴ主人からはヒトの匂いと我々の様な臭いがするな?」
疑問を持っていたのか、くつろいでいるとそう聞いてくる。
「種族が死人なんだってよ」
「……?」
首を傾げて訳が分からないといった様子で目をぱちくりとさせてくる。
可愛すぎる。
「俺、現実世界では死んでんだよ。んで、こっちの世界に意識だけ――」
「……??」
訳が分からなすぎたのか首を180°回転していた。
もう可愛いとかじゃなく、怖い。
「まあ言っても分からんよな。詳しい事は俺にも分からん」
分からない事だけは分かるのか、首を回転させた状態で頷き出す。
ゾン美少女の首周りがどうなってるのか、既に俺は考えることを放棄した。
「そう言えば名前ってあるのか? お前」
「オマエじゃない! ゾンビガールだ!」
ドヤ顔で自分の種族名を言い出した。
魔物は総じて自分の名前イコール種族名で結びついていると考えられる。
「だがそれだとゾンビガールが2人いたら誰か誰だかわからなくないか?」
「ムっ……確かにそうダナ」
「ここは1つ俺が命名してあげよう」
何を隠そうこの俺、玄後 白夜こと白魔黒はとあるモンスター捕獲RPGゲームにて全モンスターにニックネームを付けるという、姓名判断師もビックリな名前付けたがりなのだ。
「イヤ……イイ」
目を逸らして言う。
「遠慮はいらないぞ?」
何故か照れている様にも見えた。
やはりここは可愛い可愛いこの子の為にも良い名前を付けねばな。
「ヒトから魔物が名前を貰うトキは求愛のサイン。貰えないよ」
ふ、フラれた!? 告ってもないのにフラれた!?
さっき大スキって言たよな!? アレは一体!?
「ソノ……ゴ主人は優しいし……スキだけど……まだそうイウのは早い……と思ウ」
……まあなんだろうか。人と人が行為に及ぶような感覚なのだろう。
だがひとつ、忘れている事があるのでは無かろうか。
「俺はこれでも分類としてはアンデットだぞ」
生きている人間では無い。もう既に死んでいるのだ。
「あっ! ソウだった! じゃあチョーだい!」
そこは納得出来るのか。なんと言うか……本当に自由だな。
まあもう既に名前は考えてあるのだ。
「……言うぞ? いいな?」
嬉しそうにまだかまだかと待っている。
かなり勿体ぶる。それだけこの名前には自信があるのだ。
「はやク! はやク!」
深呼吸を一つ。
心の準備は出来た。
「今日から君の名前は――ゾン子だ!」
――あからさまに不機嫌な顔を見せた。
あっ……アレ? おかしいな。
「……ゴ主人? 私だって怒る時は怒るんダヨ?」
もしかして……お気に召さなかった?
結構な殺意を感じるぞ!?
「ま、待ってくれ! 冗談だよ冗談! 全くジョークが伝わらないゾンビちゃんだなぁ全く」
「……そうダヨね! 全くゴ主人っタラ〜」
うりうりと肘で突っついてくる。
……ヤバい。どうしよう。ゾン子以外思い浮かばない。
こういう時はあれだ、何か思い浮かんだ食べ物で……。
「ミント……」
ボソッとつぶやく。
今の俺にはこれぐらいしか考えが付かなかった。
「ミントなんてどうだ!?」
「ウーン……いいヨ!」
お気に召してくれたようだ。よかった。肌の色が薄い緑色で助かった。
『ゾンビガール ミントを白魔黒の使役死霊として登録します』
急にウィンドウが立ち上がり、そんな事を言い出す。
「わわっ! ナニコレ!? ゴ主人! へンなの出てきたヨ!」
どうやらミント側にも同様のウィンドウが出てきたらしい。
「よく分からんが、右上にあるバツの印に意識を向けてくれ。そうすりゃなんとかなる」
「わ、分かっタ……出来タ! 無くなっタ!」
キャッキャッと園児のようにはしゃいで喜ぶ。
元々この世界の存在が、急に一度も見た事のない物に遭遇したら驚くのも無理はないだろう。一種の敵だと思っているかもしれない。
「さっきのはウィンドウって言って、大事な事が書いてあったりするモノだからな。そうだ、こうやって指を弾いてくれ」
折角だから、メニュー画面も使いこなせるように教えることにする。
メニュー画面には新たに使役死霊。と言った項目が出来ていた。当然といえば当然だが、今のところそこに名前があるのはミントだけだ。
「ウワァッ! 出てきた!」
――こうして何とかミントに説明を終え、一応フレンド交換をして、何とか一段落ついた。
職業はまさかの
それはそうとまだ拳闘士を手に入れたプレイヤーは居ないだろうに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます