第2話 よっちゃんvs星空バスターズ
前回までのあらすじ
アスレチックで遊ぶ流星たち。そこに来たのは、大きな体格のよっちゃん。
よっちゃんは戦いを仕掛けてきた。一体どーする?
砂嵐が吹き荒れ、星空バスターズとよっちゃん達の間をすり抜けた。
私は赤いタスキをズボンのおしりにしまった。
「おぃ、いつものルールだからな…」
いつものルール…
6対6でするアスレチックネズミのしっぽ取りだ。相手のしっぽを先に全部とるか、相手がアスレチックから降りたら勝ち。負けたチームが勝ったチームに1つ、願いを叶えなければならない。
それぞれしっぽを付けると、チームリーダーの元に近づいて行った。
流星がよっちゃんの言葉に返事を返した。
「おぅ!ま、今日も俺らが勝つけどな!」
アスレチックの下では、観客が息を飲んで見守る。両者向かい合うと、1人の男の子が2つのグループの間に立ち、手を上にあげた。
「じゃあ行くよー!よーい…スタート!!」
男の子の手が振り下ろされると、まずは希望の元に人が集まった。
「ひぃっ…!」
4人のよっちゃんの仲間が希望のおしり目掛けて手を伸ばした。よっちゃんが誇らしげに流星に叫んだ。
「ははは!いつも希望はしっぽを1本も取れずに逃げてばっかだからな!弱いやつから全員で囲んで、1個ずつしっぽを取っていく…どーだ、流星!今までの俺らとは全然違うだろー!」
よっちゃんの言葉を聞いた流星は、ニヤリと笑った。
「そーかな?」
希望のしっぽを引っ張ろうとした1人の男の子は、後ろから気配を感じ、後ろに振り返った。するとそこには、叶が男の子のしっぽ目掛けて手を伸ばしている。
「つっ…!」
すかさず後に振り向き、叶の方を見ようとした。その時希望の腰を強くおしてしまい、希望が体制を崩し、倒れた。男の子3人がにやりと笑みを浮かべ、各々希望の腰からタスキを取ろうとしたその時。夢がアスレチックを伝い、3人の頭上から飛び降り、希望のおしりを隠すように座り込んだ。赤い目を光らせ、3人の男の子を睨みつける。
「あははっ!弱小の夢がいきってやんの!」
「なんだよさっきの動き!プリキュアのまねかよ」
口々に2人の男子が笑う中、ただ1人。健くんは、夢の前に出た。
「おぃ」
夢が健くんに目をやると、青い冷徹な目を光らせた健くんがそこにいた。
「こいよ…夢」
夢の目が大きく開くと、手を床に付き、姿勢を低くし、威嚇している。2人のやり取りを見ている男の子2人に、私は静かに歩み寄った。そして、息を殺し、気づく暇を与えないようにしっぽを奪い取った。
「よそ見してていいんですか?気づかれない間にしっぽ。取られてますよ?」
そう言うと、男の子達は慌てて自分のおしりに手を当てた。私がにこりと笑っていると、蛍のいる方から声が聞こえた。
「それはこっちのセリフだよ?愛ちゃん」
ニコニコと笑いながら彼は蛍から取ったタスキをヒラヒラと見せびらかしながら私の方へと足を運んだ。彼は西園くんだ。
「…ふふっ、西園くん…今日はあなたもいるのですね…これは、ちょっときついかも。」
流星は不敵な笑みでゆらゆらとよっちゃんに近づきメガネをかけ直した。
「見せてやるよ…俺たちの
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叶は倒れた希望の手を取り、起き上がらせた。
「大丈夫か?」
叶が心配そうに見つめると、希望は満面の笑みで頷いた。目の前にいる男の子を前に叶は希望に
「やれるか?」
と尋ねた。希望は震える手を組むと、か細い声でうんと頷く。
叶は男の子に走りよると、男の子は背後を庇うようにして手で隠し、もう片っぽの手を叶のしっぽを狙って伸ばした。すると横から、希望が男の子のタスキを狙って走り出した。
それを見た男の子は左足で希望を蹴り飛ばした。
「ぐっ…!」
「希望!!」
希望は背中を強くうち、うずくまった。
叶は慌てて近付こうとするも、男の子がタスキを狙って伸ばす手を避けるので精一杯だった。
希望はうっすら目を開けながら
「僕の事は構わないで!」
と振り絞った声で叫んだ。叶はぐっと唇を噛み、周りを見た。夢と健は激しい交戦中。私と西園さんはどこにいるのかすら検討もつかない。流星とよっちゃんはアスレチックの端で、せめぎ合っていた。ふと、退場した蛍と他の男の子二人を見てある秘策を思いついた。
叶は希望に目をやると、なにやらサインを出した。
気づいた希望は小さく頷き、よろけながら立ち上がった。
叶は後退りしながら、相手のしっぽに手を伸ばす。男の子はそれをよけながら、叶のしっぽ目掛けて飛びかかっていく。その争いをしているうちに、叶はアスレチックの端に追いやられた。
「危ない!!」
蛍が叶を見て叫んだ。男の子は
「叶のしっぽ!とーったぁー」
と叫んで叶のしっぽに手をかけた。彼は完全なる勝利に安心感を覚えていた。手を引こうとしたその瞬間。叶は自らしっぽを取った。衝撃を受けた男の子は唖然とした。
よっちゃんが後ろで
「後ろだ!!逃げろ!!」
と叫んだ頃には、もう遅かった。
男の子が後ろを振り向くと、そこには倒れていたはずの希望が、男の子のしっぽを握りしめていた。
男の子は目を大きくして希望を見た後、
「なんで…俺が…こんな雑魚に…よっちゃん…」
とだけ呟いてそのまま倒れてしまった。その姿を見た叶は安心した様子でその場でぐったりと倒れてしまった。
「叶くん!!」
希望が叶の元へと駆け寄り、叶の上半身を自分の膝に抱えあげると、弱々しく笑った。
「ははっ…やっぱ…希望を信じ…て、よかったよ…あん時…俺が自らの、しっぽを…切り捨てれば、油断したあいつが…すきを見せるって…分かってた。」
「それならなんで僕のしっぽを取らせればよかったのに…僕なんかが残ったって、みんなの役には立てないよ…」
希望がそう言うと、叶は肩を優しく叩いた。
「何言ってんだよ…お前は十分、活躍してるよ。俺達星空バスターズの、大事な仲間として…それに今日だって…俺一人じゃ勝てなかった…倒れるくらい、痛い思いしても、立ち上がって、あいつのしっぽを取ってくれた…そーだろ?」
希望は黙って頷いた。
「希望は、この戦いで初めて。1つ、タスキを取れた…その1つはチームにとって大きな第1歩だ…だから…頼む…俺の分まで夢を…守ってくれ…!」
希望は、涙を服で拭き、手を取った。
「わかった。必ず約束するよ…!絶対勝ってここに帰ってくる!夢も、愛ちゃんも、流星も、みんな僕が守ってくるからね。」
そう言って叶の手にしているハチマキを取り、彼は追い風に向かって歩いていった。
観客たちの声援がある中、蛍は白い目でこう言った。
「ただのしっぽ取りだよね?」
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