星空バスタージュ

スイートポテト

第1話 星空バスタージュここに見参!

遠い未来。沖縄の小さな島。

ハートロックの見える場所に、社会福祉法人星空学園分園と書かれたツリーハウスがあった。児童養護施設である。庭では子どもたちが楽しそうに駆け巡り、楽しい本の世界の話や、お飯事、ドッチボールをして遊んでいる。

そんな子どもたちを見つめる老婆が、縁側の縁で座っている。

そこに一人の少女が老婆に近づいた


「ねぇ!施設長さん。今日も話してよ。6人の星空バスターズの話。」


その姿を見た職員と思しき人物は、子どもの肩を持ち、その話はしてはいけないと諭す。老婆にこりと笑って職員の肩を叩くと、首を振った。おばあちゃんは笑顔で少女を見た。


「あぁ……いいよォ…また楽しいお話を聞いて欲しい…」


老婆の膝に少女が座ると、その周りには8人の子どもたちがあつまった。

老婆は少女の髪を解くと、クシで解きながらゆっくりと話始めた…


6人の夜空の奇跡の物語を


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


これは、私達がまだ4歳の時の話だ。星空学園はまだ出来たばかりの施設で、住んでいる子も6人しかいなかった。施設自体も京都の山奥にあるツリーハウスだった。

6人の朝はいつも早い。鳩時計が朝の五時の挨拶をすると、6人の寝る部屋に、施設長が起こしに来た。


「あんた達!朝よ!起きて」


6人の子どもたちは急いで起き上がった。


初めに服を着替え始めたのは6人のリーダーの流星くんだ。


「へへっ、誰が1番早いか競走な?」


そそくさと彼はトイレに向かうと、後ろから希望くんがボタンをかけ間違えながら半泣きになっている。


「待ってよー流星ー」


流星の後を追うように蛍ちゃんがにぱっと笑った。


「早くしないと、負けちゃうよー!」


そんな3人を見ながら落ち着いた物腰で、夢姉さんの服を着替えさせている叶。


「…ごめんな?いつも遅くて…」


叶が悲しそうな顔で言うと、夢姉さんは首を横に振り、叶の服の袖を優しく握った。


「…んん、叶がいれば…いい…」


私はそんな二人を見てふたりの肩を叩いた。

そして、夢姉さんの髪をゆっている


「大丈夫…絶対に間に合うよ。だから、2人とも、そんなにショックを受けないで?」


私は2人の手を引いた。

そして歯磨きをし、食事を共に行い、荷物をとった。施設長が来る車に3人は1番に乗った。そそくさと流星くんが車に入ってきた。扉を思いっきりしめて、笑って叫んだ。


「やっりー!1位〜」


嬉しそうに言う流星くんをみて私はクスリと笑ってしまった。


「ふふっ、残念。今日は私達3人の勝ちだよ。流星くん。」


流星くんは私たちを見て頭を抱えて落胆した。


「はぁぁまた負けたぁ」


むすっと頬をふくらませながら、私の隣に座って、私の肩に顔を埋めた。


「お前毎朝早すぎー」


グリグリと頭をゆする流星くんの頭を撫でた。


「ふふっ、流星くんはご飯をきれいに食べるから、素敵だよ?」


ふてくした顔をゆっくりと上げ、顔を真っ赤にしていた。流星くんの顔を見て私もつられるように顔が真っ赤になった。流星くんは、ぎゅっとてをにぎった。


「…愛…いつか俺が勝ったら、俺の……」


そこまで言うと、車のどあが開き、流星くんの手が離れた。


「あー!また最後だー!」


蛍ちゃんが流星くんの隣に座り、希望が1番前に座った。蛍ちゃんは流星くんの赤い顔を見て首を傾げた。


「ねぇ、流星。顔が赤いよ?お熱?」


慌てて流星は顔を隠して


「そんなことねぇよ!」


と答えた。心臓がドクンドクンと高鳴る。

私が赤い顔を隠すように窓の外を見ていると、流星くんはさりげなく手を握った。


彼の顔を見ると、耳元で小さな声で"皆には内緒…な?"と囁き、満面の笑みを向けた。

私は首を縦に降って笑い返した。


「遅くなってすまん!さぁ、行こうか。」


流星くんのお父さんが慌てて車の運転席に座ると、エンジンをかけ、走り出した。


<hr>

幼稚園に着くと、先生達以外誰もいない。1番に園内に入ったと歓喜をあげる子供達を横目に、先生が流星くんのお父さんに駆け寄ってきた。


「星野さん。いつも朝早くから大変ですねぇ。」


「いえ、この子達をよろしくお願いいたします。」


そう言うと、車で職場に戻った。私達は園で身支度を済ませると、園庭で人気のアスレチックで、鬼ごっこを始めた。


「まてまてー!」


アスレチック鬼ごっこを楽しんでいると、僕も混ぜて!と徐々に子供たちが増えて、アスレチックにはたくさんの子供たちで溢れた。それをよく思わなかった、体格の大きな男の子が私達に話しかけてきた。


「やーい!星空バスターズのばーか」


流星くんは声のする方に目をやった。


「なんだ。よっちゃんかよ。相変わらずガキだな」


流星くんは鼻で笑うと、よっちゃんが殴り掛かりながら叫んだ。


「お前もガキだろ!」


ひょいっとよける流星くん。よっちゃんはそれを見て、歯を食いしばった。そして流星くんを指さした。


「やい流星!今日という今日こそ、俺とお前の決着を付けてやる!」


よっちゃんの後ろから5人のやんちゃな男の子たちが近づいてきた。それを見た星空バスターズの全員は流星の周りに集まった。


「おぅ!望む所だ!今日こそ、お前らに印籠を渡してやるよ!」



決戦の火蓋が切って落とされた。

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