第294話 スルトとコウガの秘密 1
*「続きって言っても本当にたいして話すことないんだよな。」
リュースティアとスルトのじゃれ合い?が一段落した後にスルトが放った言葉だ。
その言葉リュースティアは思わず目を顰める。
その気配を敏感に察知したスルトは慌てて次の言葉を繋げる。
「いや、面倒とかじゃなくてさ、ほんとなにをどう言うべきかわかんないんだよ。それに今の俺たちの事情も説明しにくいんだって。俺自身よくわかってないんだから。」
よくわかってないってお前のことだろ。
というのどまで出かかった言葉は飲み込む。
そう、俺は大人だからな。
うん、いちいち話のこしを折るような真似はしないのだ、しないと言ったらしない。
「わかったよ、じゃあ俺の質問に答えてくれ。まず、コウガの国は結局なんだったんだ?」
聞いた限りだとはみ出し者の集まりのような感じだがコウガの真意がわからない。
行き場のない者たちの為だけではない何かがある気がしてならない。
救いの手を差し出すという行為自体には何の疑問も抱かない。
だが、コウガの壮絶な人生を聞いたからか、アルとの話を聞いたからかはわからない。
だが、ただ国を作って行き場のない者を保護して終わり、という風にはどうしても考えられないのだ。
「ヤマトは何でもありの国だな。いろんな国や部族からあぶれた奴らの集まりだから当然と言えば当然なんだが他のどの国にも属さず、表立った交易を行っていないにも関わらずどの国よりも栄えてた。これは間違いない。」
「それは土地が豊かで衣食住が完備されていたって事か?」
「いや、あいつが国を作った辺りは不毛の大地と呼ばれていた。」
「不毛の大地?」
聞きなれない単語に思わず聞き返す。
字面から何となく意味は理解できるができるからこそ栄えるという言葉と結びつかないのだ。
「ああ、その土地では植物は一切育たず、一滴の水すらも湧くことはないって言われてたな。魔物でさえも息絶える呪われた土地だ。」
「どうしてそんな場所を選んだんだ?」
「さぁな。あいつの考えはよくわからねぇがここなら誰も近づかないとか忘れられた土地がどうのこうの言ってたな。」
なるほど。
世界から排斥された人たちが暮らすには確かにいい場所かもしれない。
不穏な噂、周囲を海に囲まれていて隣接する土地がない点は利点になるだろう。
だが暮らすことができなければ元も子もないはずだ。
「そんな土地がどうしてどの国よりも栄えることができたんだ?作物が育たず水もないなら生きていく事すら困難になるだろ。」
「あ?そこら辺は詳しく知らないんだよ。俺と会った時にはすでに不毛の土地は見る影もなかったからな。だがコウガとの記憶共有のおかげかある程度は分かるぜ。」
そう言って意味ありげに口元を吊り上げるスルト。
何となくすごくむかつく。
だが俺は大人、そう大人なのだ。
だからすこーしだけ威圧を込めた視線をおくるだけで我慢する。
決して心の内側で(もったいぶってないでさっさと言えやコラァ)と思っていても口には出さないのだ。
そう、俺は大人だからな!
「コウガの魔法だよ。」
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