第289話 とりあえず要所だけでも
*
「はぁ、わかったから要点だけでもおしえてくれ。」
リュースティアはスルトをなぶり、もとい説得をした結果疲れた。
なぜか。
スルトの防御力が高いせいだ。
やはり腐っても古の魔王の一人なのだろう。
リュースティアの全力で殴らないとお仕置きにならなかった。
そこで精魂尽き、今に至るのだが正直もう寝たい。
というかこれからさっきのコウガの話と同じだけの話を聞く気になれない。
話の長さもだが、いちいち重い。
「おっ、いいのか?こっちも助かるぜ。っつてもまとめると色々あったとしか言えねぇんだけどな。」
リュースティアに殴られた腕をさすりながらスルトが言う。
そして先ほど殴られた原因と同じようなことを口にする。
こいつに学習能力はないのか?
リュースティアのこめかみに青筋が入る。
それに気が付いたのかスルトが慌てたように付け足す。
「いや、ああ。要約だよな。お、おう、任せろ。」
そう言ってなぜか神妙な面持ちで座りなおす。
いや、今更取り繕っても遅いんだが?
つかこいつもう傷が癒えて嫌がる。
そんなことを想いながらリュースティアはスルトにジト目を向けるがスルトは気づかずに話を始めた。
*
えっと、俺とコウガが出会ったのはヤマトって国ができてから数十年経ったくらいの事だったな。
巨人の居住区にコウガが来たんだ。
大きくなったミーシャを連れてな。
「おい、人間。そこでなにをしている?」
森で狩りをしていたスルトが見つけた小さな2人。
それがコウガとミーシャだった。
ミーシャはコウガが出会った時とは異なり大人の女性になっていた。
年齢までは分からないがかなりの歳であろうことは予想できた。
もっともコウガのスキルで寿命は伸ばしているであろうが。
「ここが巨人族の領土だと知って入ってきた愚か者か?それとも単なる迷い人か?」
木の影から出てきた二人にスルトは問う。
いくら自身の領地内で相手が人間だろうと警戒するに越したことはない。
当時は戦争の傷跡もだいぶ癒え、暮らしはだいぶ豊かになってきたとは言えまだまだ生活に困窮している者は多くいる。
それに種族間の垣根は今だ高い。
特に人族はその弱さゆえか、他種族と相いれず独自の国家を作り上げ、数の暴力でその勢力を広げつつあった。
弱いくせに欲深く傲慢、そして狡猾。
それがスルトの持つ”人間”のイメージだった。
だがそんな人間であれスルトは問答無用で殺す気にはなれなかった。
故に問いかけ、単なる迷い人なのであれば森から出してやるくらいのことはするつもりであった。
「俺はコウガ。ヤマトって国で王をやっている。今日は巨人族の長に話がある。」
コウガが発した言葉はスルトの想像しないものであった。
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