第285話 追いかけっこ
*
「さてと、ここらへんでいいだろ。」
町を出て山に入ったコウガは自分の周囲に人がいないことを確認し、探知魔法で対象人物を探す。
相手が本気で会うつもりがないならコウガがありとあらゆる魔法を行使して全力で探そうと、奴を見つけることはきっと不可能に近い。
だがコウガには奴を見つける自信があった。
というより、奴にはコウガから逃げるつもりがないという確信があった。
「見つけた。けどこれは、、、。くそ、おちょくってんのか?」
コウガの予想通り奴はすぐに見つかった。
だが見つけた奴の気配は複数。
おそらく分身か魔力の残滓でもばらまいたのだろう。
コウガの力量を試すつもりか、ただのゲームのつもりか。
おそらく後者だろう。
コウガはため息をつき、しらみつぶしに奴を探す為に一番近い場所へと転移した。
*
「おっと、ようやくかぁ。さぁ、コウガ君、遊ぼうか。」
コウガが探知魔法を行使した瞬間、相手にはそれがわかった。
ずっとコウガを監視していれば当然なのだが。
コウガが見つけられる確信を持っていたと同じように相手もコウガがいずれ自分を探しにくるであろうことを知っていた。
だからコウガが自分を探しにきたとしたらどうするかをずっと考えていた。
どうやって遊ぶか。
どうやれば一番楽しむことができるのか。
考えるだけで楽しかった。
そしてそれが今、これから現実のものとして始まろうとしている。
だから自然と口が笑みを作るのは仕方のないことだ。
「ふふ、楽しいなぁ。でもまだまだこれからだよね。」
彼の長く退屈な日々の中で珍しく楽しい時間であった。
*
「くそ、ここもハズレか。やっぱしらみつぶしに探すのは効率が悪いな。もっと絞って探知してみるか。」
14件目のハズレに転移したコウガは仕掛けられていたトラップをかわしながらつぶやく。
奴は丁寧に各所に設置した自分の分身にトラップを張らせ転移してきたコウガをここぞとばかりに攻撃してくる。
それも本気ではなく、遊び程度の力で。
ここまでの分身を分析する限り分身によってレベル差があり、高レベルな奴ほど本気でコウガの命を狙ってくる。
そして低レベルなやつは嫌がらせレベルの攻撃しかしてこない。
トラップも同じだ。
嫌がらせレベルから致死レベルまである。
一番うざかったのは転移した先にいた大量のG。
そしてコウガが現れた瞬間にさらに大量のGがわらわらと、、、、、。
今思い出しても背筋を寒いものが走る。
あれは、無理だ。
だから思わず爆炎魔法を使ってしまい、周囲一帯が焦土と化したことも仕方がないことなのだ。
気絶しなかっただけましだ。
もちろんん犠牲者もいないし、焦土化した周辺もちゃんと干渉魔法でもとに戻しておいた。
ミーシャを連れてこなくて本当によかった、心からそう思ったことは言うまでもない。
*
「あははっ、まじか、コウガ君。ビビりすぎでしょ。それにとっさに爆炎魔法って。さすがすぎるよ。」
コウガが大量のGに囲まれ気絶寸前になりながら爆炎魔法を行使する様子を眺めていた奴は腹を抱え爆笑していた。
仕掛けたのは紛れもなく自分自身なのだが。
完全に楽しんでいる。
「あー、面白すぎるなぁ。こんなのまだまだ遊びたくなっちゃうじゃないか。けどコウガ君も本気出してきちゃったし、潮時かな。」
そう言って爆笑しすぎて痛むお腹を押さえながら彼は立ち上がる。
そしておそらくコウガが最後にたどり着くであろう場所へと転移する。
そこには分身もトラップも仕掛けていない。
彼とコウガの対面にそんな無粋なものは必要ない。
必要なのは互いの体と意志だけだ。
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