第274話 チャーハンと序章
*
「どうだ?」
「うーん、よくわかんない。」
コウガとミーシャの旅は順調とはいかなかった。
ミーシャの家族を探すにしても手がかりが少なすぎる。
馬車からの痕跡やミーシャ記憶を頼りに放浪の旅を続けているがこれといった成果はまだなにもなかった。
「まぁそんな簡単に見つかるわけないか。そろそろ飯にしよう、なに食べたい?」
先ほど見つけた小川のそばまで戻りコウガは荷物を下ろした。
おやじが用意してくれた荷物には調理器具があったので簡単なものなら作れる。
とはいえレパートリーなど焼くしかないが。
「チャーハン!」
「またか?昨日も食べただろ。」
「おいしいものは何回食べてもいいの!」
よほどコウガの作るチャーハンが気に入ったのかリクエストされるのはそればかりだ。
さすがにコウガとしては飽きたのでそろそろ別のものを食べたいとは思う。
だがミーシャに期待する視線を向けられては逆らう術はない。
仕方がなと諦めコウガは鞄の中から材料を取りだす。
「わかったわかった、お嬢様の仰せの通りに、だ。」
「やったぁ!コウガお兄ちゃん大好き!」
ミーシャに大好きと言われるなら毎日チャーハンでも悪くないかな、とか思いながら材料を通りだしていく。
だがそこでコウガの動きが止まる。
「だめだ、ミーシャ。米がない。」
「そんな、、、、。じゃぁチャーハンは?」
「すまない、俺にはもうどうすることもできない。」
「嘘、コウガお兄ちゃん!嘘って言ってよ!」
なんだこの芝居臭い会話は。
とか思ったがミーシャも面白がっているのでもう少し付き合うか、などと考えていると背後で小枝が折れ、布が擦れる音がした。
「誰だ⁉」
急いでミーシャを背後にかばいうしろを振り返る。
人の姿はない、だが誰がこっちを見ている。
急な接敵に身構えるコウガ。
「そんな怖い顔しなくても大丈夫、何もしないよ。」
そう言って木の影から姿を現したのはあの男だった。
ミーシャを晒い、コウガの胸のくすぶり続ける言葉を残した男。
自称イエヤス。
確かに彼の言うように敵意はないようだがその目は何かを企んでいるかのように怪しく光っていた。
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