第258話 やっぱりハードモード
*
「俺TUEEE!」
コウガはきっと村の人には理解できないであろうことを口走ると神様から与えられたスキル、
詠唱も魔法名も唱える必要はない、頭で考えるだけで発動できる。
実に使いやすい。
一週間でだいぶこのスキルの扱い方はマスターした。
もっとも常に纏わりついている空腹のせいでたいしたことはできなかったが。
それに激戦をしたというわけではないのでステータスも大して上がっていない。
つまりこいつらから反撃を受ければ死ぬ可能性のほうが高い。
それでもこいつらを倒すのには充分。
かえっておつりがくるくらいだ。
「お前らは俺の敵じゃないんだんよな、これがさ。」
コウガがスキルを発動、ガルムたちの前に手をかざすと手前にいるガルムから順にまるで一気に100年の時が過ぎたかのように老化、腐敗、そして最後は灰へと化した。
一歩も動くことなくコウガは村を襲おうとしていたガルムの群れを蹂躙したのであった。
ちなみに手をかざしたのは何となくだ。
コウガが干渉した対象はガルムの細胞と脳。
このスキルは様々な事柄に干渉できるとは言っても当然のごとく、生物の命や時間に直接干渉することはできなかった。
そんなことができたら神にでもなれる、はなからそこまでは期待していなかったので特に落胆するようなこともなかった。
だがしばらく調べているうちにこのスキルは間接的になら命にも干渉できることがわかった。
つまりは体液、体細胞、体組織、それらになら干渉することが可能なのだ。
簡単に言えば今回のように細胞に干渉し、細胞分裂を早めて生物の死期を早めることができる。
そして脳機能に干渉することで体内組織を活性、さらに分裂を早める。
結果、一瞬で塵になる。
細胞に干渉することは十分命に干渉することになると思うのだがこの世界では科学が発達していないせいか死ね、という干渉以外は受け付けてくれる。
制限があるとは言っても使い方によってはそんな制限などないに等しい。
つまりは完全無欠、誰がなんと言おうと最強の能力。
チートだ。
「さっ、終わったぞ。けが人はいないか?」
ガルム達が村を襲う前にい割って入ったのだからけが人などいるはずがないのだが逃げるときに転んだものがいないとも限らないし一応聞いておく。
もしいたら治療でもしてあげれば感謝の念はさらに強くなるだろう。
完全な下心からの発言である。
「あ、悪魔だ。。。」
「天災じゃ、神がお怒りになられた。」
「ひ、ひぃぃ。」
「どうかお助けを。」
あれ?
思ってたのと反応が違うんだけど。
手をかざしただけで複数の相手を無に帰すことのできる者。
何をしたのかわからなくとも脅威であることだけは理解したらしい。
「いや、別に俺は村をどうにかしようとかじゃないんだ。あいつらがここを襲ってるのを見たからそれで、、」
そこまで言ってコウガは言葉を切った。
誰一人としてコウガの話を聞いているものなどいなかったからだ。
皆コウガの前にひれ伏し、お許しを、とか、お助けを、とかの許しの言葉か神への祈りをささげていた。
村人たちはコウガを怖れ話を聞くことはもちろん姿さえも見ようとはしなかった。
「、、、、、、、、。食べ物を。」
それを聞いた村人が複数すぐに食糧庫らしき蔵へと駆け出して行った。
他の者たちは祈りを続けている。
もはや言葉など彼らの耳には届かないだろう
しばらくして大量の食糧をもった村人が戻ってきた。
いくら空腹だと言ってもこれはとても若い男一人が食べるような量ではない。
供え物のつもりなのだろうか、これじゃあ本当に邪神か悪魔だ。
こんなこと、俺は望んでいない。
コウガはリュック一つ分くらいの食べ物を取ると何も言わず山へと帰っていった。
「くそ、何が俺TUEEEだ。何が異世界だ。こんなんハードモードすぎんだろ、、、。」
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