第257話 イージーモードへの転機
*
「グルゥウウウ!ギャギャァ!」
前の世界では望んでも見ることなどできなかった満点の星空を寝っ転がりながら見るとはなしに眺めていたコウガは魔物らしき声に意識を現実に戻された。
無限にも思われるこの空を眺めていると今いる現実を忘れられることを最近知った。
「魔物か?くそ、起きたら腹減っちまったじゃねぇか。くそ、もう魔物でもなんでもいい。俺は食う。」
意識を現実に戻されたコウガは立ち上がり魔物の気配に意識を集中させる。
山の中で維週間も暮らせば嫌でも気配を掴むのはうまくなる。
これでこの山に動物でもいれば空腹が凌げたのに、、、。
と思うがこの山には動物は住んでいないことがこの一週間の探索でわかった。
魔物が多いからか、食べ物が少ないからか、とにかくこの山に食べられるたんぱく源んがないことだけは確かだった。
それでも魔物だけは食べなない、コウガは今まで耐えるに堪えてきた。
それだけはしてはいけない、と。
魔物は食べてはいけない、死の肉だ。
魔物は空気中の魔素を多く体内に含んでいるため魔力を持つ人間が食すと体内の魔力量が過剰になり、暴走する。
暴走した魔力は体内に留まることができず暴発、死に至る。
万一助かったとしてもその者は二度と魔法を使うことはできない体になるらしい。
というようなことが神から得た情報の中にあった。
だから当然今の今までは魔物を食すなどという考えには至らなかった。
だが空腹の限界にもうそんなことにかまってはいられなくなったコウガは魔物を食べて死ぬ可能性よりも今この飢餓感から逃れることを選んだ。
「確かこっちの方から、、、、。いた!」
魔物の声がする方へ向かうとそこは村へと下っていく山道ルートの一つだった。
もっとも人は使う事のない獣道の一つだが。
「あれはえーっと確か、、、、神話にでてくる犬か。まぁいいやどっちみちうまくはなさそうだしな。でもこいつらこんなとこでなにしてんだ?このまま進めば村にでちまうぞ。」
コウガが見つけた魔物、それはガルムと呼ばれる狼のような犬だ。
コウガの知識では北欧神話に出てくる死者の国の番犬だったはずだが。。。。
まさかここが死者のとの境目ってわけでもないだろうし。
そもそも神話に出てくる犬って食べていいのか?
すでに食べる前提、そんなことを考えながら気配を消しつつ、ガルムの群れの後を追う。
食べていいのか否か、そんなことに気を取られていたコウガはガルム達がすでに村まっできていたことに気が付かなかった。
「うわぁぁ!ま、魔物が出たぞー!」
襲撃に気が付いた村人の上げた声でようやくすでに村にたどり着いていたことに気が付くコウガ。
完全に出遅れである。
「やっべ。もうあいつらついちゃってんじゃん。つかやっぱ村を襲う気だったんかよ。くっくっく、これはついに来た!ワンちゃんどもめ、俺が駆逐してやる!」
村とのいさかいなどすでに過去の話、村を助ければすべて帳消しになる。
そんな都合のいい考えを持ったコウガは村人とガルム達の間に颯爽と立つ。
「俺が来たからにはもう安心ってもんだ。あんなやつら俺に任せとけ。」
決まった。
これで俺はこの村の救世主、好待遇間違いなし!
ようやくありつけるご飯。
そしてこれからはじまる俺の物語。
「とりあえずはこいつらを何とかしないとな。これが真の俺TUEEEだ!」
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