第255話 鳴神光雅
*
彼が初めてこの世界の土を踏んだのは神々との交流が頻繁に行われていた神代が終わった後だった。
その地にはすでに神々の姿はなく、地上に留まることを選んだわずかな精霊しかいない。
人類の文明はまだまだ発達しておらず、種族というものも数えられるほどしか存在していなかった古の時代の一つ。
その後何百年の時を経て、魔法は衰退し、文明は発達、そして生き物は多くの種族へと分化し、今に至る。
もっとも、唯一人族だけは他種族へと分化することも進化することもなく、技術のみが発展していった。
だがそんなことはどうでもいい。
この地に降り立ったコウガにとっては人がいる、という事が何よりも重要な点だった。
「すっげー!ここが異世界か。マジのマジな話だったんだな。あの爺さん、てっきり嘘ついてるのかと思ってた。疑ってごめん、マジ。」
異世界からの来訪者、若かりし頃のコウガである。
後にリュースティアがこの世界に飛ばされたのと同様の理由でここに居る。
つまりは借金返済のために充てられた哀れな魂の一人だ。
コウガはリュースティアから数えて5番目に転生したのだがリュースティアよりもはるか過去に転生されていた。
転生される順と時代には関係性がないらしい。
ちなみに一番古い時代に送られたのが何を隠そう、破壊神の加護を受けた青年アルフリックである。
「にしても想像してたより文明が発達してないな。まっ、魔法がある世界だしこんなもんか。魔法、魔法、魔法。くぅー、早く使ってみたい!魔物とかいないのか?」
初めて見る知らない世界。
転生、魔法、特別な力。
誰しもが一度は夢見た憧れのシチュエーションにコウガは興奮しまくっていた。
コウガが神様に与えられた加護、それは天秤の加護というものだった。
何とか神の加護、のように1柱の神からの加護というよりはもっと抽象的な複数の神からの加護らしい。
この加護についてはコウガを転生させた創造神もよくわかっていないようだったのでなおさらコウガになどわかるわけがない。
そして加護により発現したユニークスキル、それが
人、物、形の有無を問わず対象と認識したものに干渉する力。
自身の力の及ぶ範囲、すべてに干渉し、自身の望む形を再現する。
他にも対象との力の差や距離、望みの程度にもよっていろいろと制限はあるがこれは紛れもないチート能力である。
このスキルを神界で確認したときは自身の目を疑った。
魔王を倒すための勇者召喚、というわけでもないのにこのハイスペック。
天秤の加護にも少し疑問が残るが、今は大した問題ではない。
これはもう決まりだ。
確実に、絶対、やるしかない。
俺TUEEEEEEE。
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