第245話 封印の部屋
*
スルトの家の玄関をくぐるとそこは真っ暗な長い廊下になっていた。
入り口から見るだけでも横道のようなものがいくつかある。
まるで迷路だ。
それも雰囲気からしてかなり不気味な。
そしてすでに先に入った二人の姿は見えない。
こんな迷路を俺一人でどう切り抜けろと?
待っててくれてもいいじゃんか。
「こっちや。」
どっちに向かえばいいかもわからず玄関を入ったすぐのところでというよりは隅でいじけるように突っ立っているとリュースティアの後ろから入ってきたユキトが声をかけてきた。
アオイはすでにユキトの先を歩いている。
どうやら二人もこの家の勝手を知っているらしい。
助かった。
「なぁ、ここスルトの家だろ?こんな迷路みたいになってたら住みにくいと思うんだけど。」
ユキトと並ぶようにして薄暗い迷路を歩く。
灯りと言えば数メートル置きに置かれた弱い魔石灯だけ。
これじゃあたとえ道を知っていても道に迷いそうだ。
「ここには住んどるわけやない。ここがこないなってるんわ別の理由があんねん。」
おっ、答えてくれた。
てっきり無視されると思ってたのに。
「別の理由?」
「あんちゃんには関係あらへん。」
急に冷たくなりやがった。
どうやらその理由というのがユキトたちにとっては触れられたくない秘密、とやらなんだろう。
詮索する気がないって言っても信じないだろうしなぁ。
それにスルトの方が乗り気だからもはや俺にはどうもできないんだけどさ。
文句があるならスルトに直接言ってくれ。
はぁ、最初に会った時のユキトの方が付き合いやすくてよかった。
この気まずい空気どうしよ。
「ユキト、何しているでござるか。さっさとくるでござるよ。」
この気まずい空気を打ち破る人物来たーと思ったらお前かよ。
ただでさえ重い空気をさらに重くしてどうする。
っても今この家にいるのは俺以外にユキトとアオイ、そして先に行ったスルトとレヴァンさんだけだ。
このメンバーに重い空気を変える力を求めるのは酷だ。
というより期待した俺が馬鹿だった。
「わーっとるわ。わしかてことの重大さは分かっとるつもりや。」
「ならいいでござる。それよりもユキト、村長だ。」
まぁあのユキトがだんまりなんだもんな。
深刻であることは用意に想像できる。
そしてアオイが指を指した先にはスルトがいた。
レヴァンさんも一緒、雰囲気から察するにこちらよりも空気が重そうだ。
こっちでよかった、のか?
まぁいいや。
それよりも二人の目の前にある扉のほうが気になる。
遠目からでも分かるほどの禍々しい魔力。
足が竦む。
今すぐにでもここから逃げ出したい、本能がそう訴えかけてくる。
しかしここで逃げるわけにはいかない。
本能を理性で何とか押しとどめ、扉の観察をする。
扉とその周囲に多くの札、そして魔法陣が描かれていた。
おそらくはユキトの結界だろう。
だがこの様子ではいつ結界が崩壊してもおかしくない。
「ユキト、頼むぞ。」
リュースティア達に気が付いたスルトがユキトに向かって声をかける。
どうやらこの部屋の封印を解くつもりらしい。
「ほんまに、ええんやな?・・・・・いくで。」
ユキトが扉の前に出る。
そしてと扉に手をかけ呪文を唱える。
それは紛れもなく解呪の呪文、ユキトは扉の結界を解除するつもりらしい。
そしてその後ろに立つスルトとアオイの表情は今までに見たことがないほど緊張で引きつっていた。
一体この先に何が待ち受けているのか、、、。
ついに扉の封印が解かれる。
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