第242話 芽生えた疑惑
*
「・・・別になんも隠しとらん。」
あからさまな間。
そしてさっきまでの軽い口調は消え失せ表情も声も堅い。
隠す気があるのかって疑いたくなるほど隠せていない。
こうまで隠すのが下手だと逆にどうしていいかわからなくなる。
気が付かないほうが間抜けだ。
「それでバレないとでも思ってんの?まぁ別に無理に詮索するつもりはないけどさ、一応俺たちはあんたらを守るために来てるから。その仕事に支障ありそうなのはなしな。」
リュースティアだって別に無理に秘密を探る気などない。
むしろ逆。
めんどくさそうなことには関わりたくない。
「拙者たちを守る、でござるか?」
なっ⁉
せ、せ、せ、せ、拙者だと!!!!
しかも語尾はござると来たか。
「なんや、青がよそ者と口聞くんなんて珍しいやんけ。どんな風の吹きまわしや?」
「ユキトには関係ないでござる。お主、先の言葉は真か?」
つか今気が付いたけど青とかいうやつの腰に刺さってるのって日本刀か?
あんまり詳しくは知らないけど太刀っぽいな。
脇差みたいな小太刀も刺さってるし。
何より服が新〇組みたいなんだよね。
もしかしてこいつ、転生者とか?
「青、っつたっけ?どこの生まれだ?」
「拙者の名前はアオイ。生まれはユキトと同じ遠国の出だ。そういうお主は何者か?」
ってことはユキトも転生者か?
めちゃくちゃ気になるけど俺とアルがそうだし、変な因縁つけられても困る。
それに今までの経験上、異世界から来たものは多分飛ばされてる時代が違う。
だからこそ俺とアルに何千年も差があった。
「俺はパティシエ。副業で冒険者やってる。」
この先何があってもこれだけは譲る気はない。
あくまで本職はパティシエだ。
「あんちゃん、パティシエだったんか!まさかこないなとこで会えるとは、神さんに感謝やな。せやったら話は早いで、ほななんか作うてくれんか?」
リュースティアの口からこの世界にはないはずの職業が挙げられたにも関わらずこの二人はパティシエがどういうものなのかを知っているらしい。
怪しい。
やはり二人は転生者なのか?
「ユキト、落ち着くでござる。急いては事を仕損じる、ここで台無しにしたくはないでござるよ。」
ここで日本のことわざが出てくるあたり疑惑は深まる一方だ。
しかも意識していないと聞き取れないがこいつら明らかに日本語らしき言葉を発音している。
俺の勘違いかとも思ったがどうやらそうでもないらしいし。
さすがにたまたまこいつらの国の言葉と日本語の発音が近いなんてご都合主義はないだろう。
ってなるとますます二人の存在がわからなくなる。
二人のこともそうだが、この村のこと、スルトの事、いろいろと謎が多すぎる。
こいつら、本当に信用していいのか?
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