第241話 歓待
*
「ようこそ、俺たちの村、ヨトゥンヘイムへ。」
スルトの後に続き森を歩くこと10分少々、目指す集落に着いた。
スルトは自慢げにこちらを振り向き、眼を輝かせながらこちらの反応を伺っている。
その仕草がどうも自分の成果をほめてほしい子供を連想させる。
どうも目の前人物と聞いていた厄災の巨人という人物が同一人物であるということに違和感を覚えてしまう。
何千年も閉塞した地域で生活していると性格も変わるのだろうか?
それよりも感想言わないとダメかな、、、、。
「ふつー、、、、。」
ごめん、期待してたようなリアクションできなくて。
だってさ、最初にあれ見せられちゃったら普通の集落なんて普通にしか見えないよ。
それにサイズも人サイズだろ?
それを見て今更人族が何を驚けと?
だからさ、そんなに傷ついたような視線を向けてくるのはやめてくれ。
「はー、やっぱり歓迎の意の為とは言えあの巨人村を見せるのはよくないな。どうやってもこっちが劣化版に見えてしまうみたいだ。俺からすればでかいだけも何がいいのか全く分からないが。」
「でかいだけで充分だと思うんだけど。普通に生活してたらあんなサイズの村を見ることなんてないし、何より迫力が違う。多分どんな奴でもあれを見たら圧倒されるもんな。」
そんなリュースティアの何気なく放った一言に雷に打たれたような表情で固まるスルト。
もしかして気が付いていなかったのか?
「うぐぐぐ。ま、まぁいい!今日は宴だ!」
あっ、俺わかっちゃったわ。
こいつ、馬鹿だ。
*
スルトの言った通りその夜は宴が催された。
いつの間に用意したのかリュースティア達がスルトの案内で村を回り村の中心にある大きな広場に戻ってきた時には宴の用意ができていた。
広場の中心に大きな火が上がっている。
もちろん巨人サイズなどではなく普通のサイズ。
料理もお酒も危惧してようなサイズではなくよく見るサイズだった。
ただその量だけは人のものではなかった。
そびえたつ肉の塊、いくつも積み重ねられた酒の樽。
自分が食われる方だと錯覚してしまう。
「皆の者!こいつらははるばる、えーっとどこからだっけか?まあいい、わざわざここまで俺たちを訪ねに来た客人だ。ウカじいとユキトのお墨付きもある。歓迎してくれや。とまぁ建前はここまでにして飲む理由ができた。お前ら、今日はとことん飲むぞー!」
「「「おお!!!!」」」
リュースティアが肉と酒の多さにたじろいでいるとスルトがリュースティア達の紹介もそこそこに乾杯の音頭を取っていた。
この村の長がアレだからか村民もノリがいいようだ。
というか飲めるのであれば理由はなんでもいいんだろう。
すでに酒と肉の塊に群がっている人達を見てそう思った。
「どうやこの村は?おもろいやろ。」
リュースティアがその場から動ずにいるとどこからか現れたのか肉と酒を持ったユキトが現れた。
その後ろにはユキトに青と呼ばれていた者が控えている。
いまだにリュースティアを警戒してはいるようだが先ほどまでの敵意は薄まっている。
どうやら敵ではないと一応の納得はしてくれているらしい。
「面白いというか騒がしいとこだな。いつもこんなんなのか?」
ユキトが差し出してきたコップを受け取りその場に腰を下ろす。
広場の中心では火がごうごうと空に向かっているが不思議と熱くはない。
「せやな、なんせ村長がああいう人や。まあそれを抜きにしても久々の客や、テンション上がってまうのも無理ないわ。」
「久々の客?」
久々の客と言ったときのユキトの顔に影が差したのをリュースティアは見逃さなかった。
客人をもてなそうとしていたことや他種族に対する敵意のなさ、それとは逆に幾重にも張られた結界、村への入り口を守護する強者。
違和感というか、村の在り方が矛盾していてよくわからない。
その違和感の正体が今、ユキトが顔を曇らせた理由かもしれない。
初対面であまり詮索するのもどうかと思うがこれは聞かないわけにもいかないだろう。
だんまりを決め込んだユキトには悪いが。
「なぁ、この村は何を隠してる?いや、違うな。お前たちが必死になって守っているものはなんだ?」
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