第239話 それは、巨人?

「なんだ、ここ。」


口をついて出てきた言葉はなんの変哲もないありふれたものだった。

他にもっと言うべき言葉があるのだろうが言葉が出てこない。

自分の語彙力のなさを恨むが何も発することができない彼女たちよりはましだろうと思いたい。


「おーお、いい感じや。おもろいほど驚いてくれとるなぁ。まぁ安心しいや、ここに来たモンはみんなそないな顔すんねん。なぁ青?っておらんし!ほんま自由な奴やなぁ。」


リュースティア達があたりの景色に圧倒され口を聞けないでいると例のエセ関西弁が面白いものを眺めるような視線を向けたままこちらに歩いてくる。

いつまでもあほ面を晒すわけにもいかないリュースティアは顔を引き締める。

ちなみにこの瞬時の切り替えを可能にするコツは脳裏に例のモードに入ったリズの顔を浮かべること。

簡単だろ?


「ああ、想像以上に巨人の村って感じだ。それよりもなんで巨人の集落にお前みたいな人間がいるんだ?」


というか俺たちまだ巨人と会ってないんだが、、、、。

さっきからその木の裏でこっちに殺気を飛ばしてる巨人たちらしき一向は出てくる気がなさそうだし。


「自己紹介がまだやったな、ワイはユキトゆうもんや。ワイらの祖先がちと巨人さんらにお世話になってな。まぉ仲良しちゅうわけや。」


「もしかしてここらへんに結界張ってるのってユキトか?」


「せやで。にしてもあんちゃんよう気づいたなぁ。さっき青の攻撃をよけた動きといいあんちゃん強いんか?」


ああ、そうか。

エセ関西弁を聞いて殺意を抱く関西人というのはこういう気持ちなんだな。

むず痒いというかいちいちうざい。


「強いかはともかく、結界に込められてる魔力とユキトの魔力、質っていうか流れが同じだったからなんとなくそうかなって。それよりもさ、さっきからそっちにいる人達は出てこないのか?」


ウカじいに魔力のことを言われてから意識してるんだよね。

だからたまたま気が付いただけで別にすごくはないと思う。

ルイセントも気づいてただろうし。


「魔力の質?んなもん普通の人には見えんって。後ろにいる奴らも普通なら気づかんはずやねんけどなぁ。まぁええわ、出てきいや。」


いや、普通に見えてるんだが。

というか後ろのやつらってあれで隠れてる気だったのか?

まぁいいか。

とりあえずこれで巨人たちとの対面が叶う。


「ユキト、もういいのか?」


おお、巨人らしく太く低い声!

これは期待できる!


、、、、、、期待、できる?


声に反応し振りむくとそこには巨人が!

巨人が?


いやあれは巨人と称していいのか?

背丈も横幅も俺と変わらないんだが、、、、。

けどマップでの表示は巨人となってるし。

えっと、現代の巨人って等身大?


コメントに困る。

というか巨人がこんなに小さいなんて、そんなことある⁉

もはや人だよ人!

俺の期待を返せ!


つか巨人がこのサイズとかこのバカでかい巨人の集落って誰用に作られてんの?




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