第238話 巨人の村

戦闘準備完了、緊張してはいるが落ち着いている、精神状態は良好。

いつでも戦いに入れるみんな。

それとは対照的にいまだ馬車の御者台に座ったまま。

仲間外れにされたショックから立ち直れないでいる俺。


さぁ、いよいよ巨人が来るぞー!などという雰囲気にはさすがになれない。

だがマップが迫りくる敵、ないし巨人を示しているとあればいつまでもここに座っているわけにもいかない。


「はぁ。」


リュースティアは重い腰を上げ馬車から飛び降りた。

もちろんみんなが固まっている方とは違う馬車の前に、だ。

横目でちらりとみんなの顔を伺うがどの顔もなぜこっちに来ないのか?というような疑問顔だった。

もっともルイセントを除いて、だが。


戦犯はてめぇか!


ルイセントに突っかかりたい気持ちをぐっとこらえて視線を森の中へと戻す。

後でおぼえてろ、、、。


「来たぞ、囲まれてる。みんな気をつけろ!」


どうやら巨人たちが到着したみたいだ。

だいぶ近くにいるはずなのだがいまだに視界に入ってこないことを訝しげに思いながらも風神に手をかけその時を待つ。

戦う気はないがここまで敵意を向けられて備えないのは馬鹿のすることだ。

先ほどから向けられる敵意の視線が痛い。

首すじに刺さるようだ。


これは戦闘を避けられないかな、そんなことを思った時、ついにそれらは森から姿を現した。



「おったで、ここやここ。なんやぁ?そないなもんぶらさげよって戦いでもする気かいな。」


なっ、、、。

か、関西弁だと?

それも本物ではなくどことなくエセ関西弁のような響きだ。

しかもその恰好はまんま食い〇れ〇郎ではないか。

リアクションに困るのも無理はないだろ?


「そなお化けでも見たような顔しておかしな子や。ああ、ワイの事見て驚いとるんか!ちゃうで、わいはピエロとちゃうで。あんたさんと同じ人間や。」


いや、それはマップで見てたから知ってるんだ。

それよりも関西弁とその恰好の衝撃が大きすぎる。

とりあえず戦う意思はなさそうだ。


「あっ、えっと、俺はリュースティア。わけがあって巨人の村を探してたんだ。」


そういうが早いか真上に殺気を感じた。

風神を抜きつつその場を飛びのくと同時に今度は横から迫る剣。

それを抜いたばかりの風神で受け止めるとようやく連撃が止んだ。


「いきなり何すんだよ。あぶねえだろ。」


リュースティアは目の前の男に向かってわずかばかりの威圧を込めて言う。

だが相手はリュースティアのそんな威圧など意に変えさない様子だ。

つまりこの程度の威圧には屈しない程度には強者、というわけだ。


「青、やめぇな。こいつらがここにおるってことはその時点で悪人やない。わかっとることやろ。」


エセ関西弁男が斬りかかってきた男を窘める。

男は納得したのかしてないのかわからないがとりあえずは剣を納めてくれた。

そしてリュースティアに一言のわびもなくエセ関西弁男の隣に下がった。


青と呼ばれた男によって巻き上げられた土煙がようやく晴れ、リュースティア達は改めて周囲を見渡すことができた。

そして周囲を見渡したリュースティアは思わず声を上げてしまった。

そしてそれはリズたちも同じだったようで彼女たちの方から息をのむ声が聞こえてきた。


リュースティア達の目の前には自分たちが小人になったと錯覚するほどの巨大集落が存在していた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る