第237話 仲間外れ

立ち並ぶ木々に向かって馬を進める。

先ほどまで進んできた道と景色は変わらないハズなのにこの一帯だけ空気が張りつめている。

みんなの不安や緊張が伝わってくるようだ。

一応、万一に備えてみんなにはすぐに戦闘に入れるように準備してもらっている。

穏便に済むにこしたことはないが何かあってからでは遅い。

備えあればなんとやら、だ。


「行くぞ。」


その一言と共に馬車が結界を抜ける。

一瞬何かの抵抗を感じたがそのあとすぐにガラスの割れるような感覚と共に抵抗も消えた。

ロイスとの戦闘経験からわかる。

今のは結界が破られた感覚だ。

そしておそらくその事が結界を張ったものにも伝わったはず。

そしてそれとほぼ同時に近づいてくる複数の気配。


「みんな、来るぞ!」


いきなり攻撃とかはやめてくれよー。

そんな事を考えながら皆に何者かの接近を知らせる。

すでに戦闘待機中だったお陰かみんなの対応は早かった。

あっという間に馬車から飛び降りるといつの間に決めたのか陣を取る。

馬車の荷台を後ろに遠距離支援型のルイセントとリズ。

そして前衛には機動力を重視したのかルノティーナとスピネルの師弟?2人。

中間には中近距離のエルランドとシズ。

どちらかといえば二人とも近距離のバリバリ攻撃型だが魔法もそれなりに使えてルノティーナよりは冷静に戦闘を見極められる。

よって臨機応変に近、遠距離の支援ってとこか。

まぁエルランドの場合はむやみな戦闘を避けるって意味合いもあるんだろうけど。

これは主にルイセントの希望かな。

戦闘狂のエルランドを宥められるのなんてうちではルイセントくらいだもんね。

それに彼女も必死に説得しただろうし。



ああ、いいね。

みんなが戦闘に関して真剣に対応を考えてくれていたことが嬉しいよ。

その布陣も妥当なものだと思うしよく考えられている。

うん、いつ考えたのかは考えないことにしよう。


馬車を後ろにしておけばとりあえず背後からの攻撃も考えなくていい。

まぁ俺がいれば?不意打ちとか死角からの攻撃なんて心配するのは無駄なんだけどね。

それにしてもここまでの素早い動き、きっと練習とかしてたんだろうなぁ。

俺がいないとこで。


端から見れば完成された完璧であろうこの布陣。

しかし1つだけ問題があることに彼女たちは気がついているのだろうか?

それとも故意にそうしたのだろうか?

だとしたらかなり思い切った決断をしたものだ。

そう、それはそれほどまでに致命的かつ絶望的なミスなのだ。



なぜなら、、、、。


「そんな陣形俺、聞いてないからね!?」



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