第234話 動き出した運命

「で、そうするんだ?」


御者台に座ったままのルイセントがこちらを見下ろしながら訪ねる。

どうやら本人は関わる気が毛頭ないらしい。


うん、ルイセントってさルノティーナのこと嫌いだよね。

嫌いと言うよりは苦手って言った方が正しいのかな?


「どうするってもなぁ。ここまで来たなら連れてくしかないだろ。」


さすがにここまで来たら屋敷に送り返すというのもかわいそうだ。

それに戦闘になるのであればルノティーナの力はありがたい。

俺とエル、それにルイセントの三人だとリズたちをフォローしきれないかもしれない。

制御は難しいがこの風をうまく使えれば形成が変わる場合もある。


「へへー。リューにぃならそう言ってくれると思ってた。よくわからないけど戦いなら任せて!」


よくわかっていないのにここまで来たのか、、、。

という言葉をなんとか飲み込みリュースティア達の馬車へと乗り込んでいくルノティーナを見つめる。



大丈夫、扱い方は分かってる。

調子に乗らせなければいい。



そう自分に言い聞かせ、リュースティアも御者台に上がる。

そしてすでに陽は昇っていたがようやくリュースティア達はウカじいの村を後にしたのだった。




「行ったか。」


ウカじいはリュースティア達の後ろ姿が完全に見えなくなるまで村の入り口で見送っていた。

するといつの間に現れたのかウカじいの隣に老人が立っていた。

音も存在感も、生命の息吹さえも感じさせない老人は一言、それだけを言う。


「はい、道も整えているので何事かがない限り接触は避けられますまい。」


そしてそんな老人の出現に驚くこともなく、ウカじいが答える。

先ほどまでと口調が異なっているのはひとえに話す相手のせいだろう。


「いよいよ、か。はたしてあやつは何を掴むのか。しかと見届けさせてもらおうかのぅ。」


老人はもともと細い目をさらに糸のように細めリュースティア達が去っていった方を見る。

その開いているか閉じているかわからない目では何を見ているのか、何を考えているのかなど隣のウカじいにわかるわけがない。

代わりにウカじいはさっきまで疑問に思っていたことを口にしてみた。


「よろしいので?彼に合わなくて。あなた様であれば向こうに呼び出すことも可能だったのではありませんか?」


「我々は運命に干渉してはならん。すべての運命は当人次第。お主も知っているであろう?」


すでに十分干渉しているのでは?という言葉を何とか飲み込んだウカじい。

これは言っても仕方がないことだ。

このお方こそが法でありルール。

わしごときが口答えなどできるはずもない。


「そんな顔をするな。お主の思っていることはもっともだ。私たちは干渉しすぎてしまったのかもしれん。」


「いえ、決してそのようなことは、、、。」


やはりこのお方の前で隠し事などできるはずもなかった。

心で思っていたことを知られてしまい弁明しようにも心の中まで見透かされてしまうのであれば意味はない。

だが必至で取り繕おうとするウカじいを老人は遮る。


「よい。それよりもわかっているな?頼むぞ。」


それだけを言い残すと老人は現れたときと同じように音もなく消えた。

後にはひどくさみしい空気とウカじいのつぶやきだけが残る。


、すべてはあなたとの御心のままに。」









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