第230話 懐かしい魔力
*
「懐かしいのぅ。」
二回繰り返した。
大事なことなのだろうか?
って違うだろ!
そういう問題じゃない。
「懐かしい?」
「うむ、リュースティアと言ったかのぅ?お主からはどことなく懐かしいにおいがするのじゃ。」
におい、だと?
くんくん。
だめだ、自分の匂いはよくわからん。
もしかして俺、そんなにくさい?
「ほっほっほ。お主の体臭がくさいという意味ではない。お主の魔力の質とでも言えばよいのかのぅ、懐かしいのじゃ。」
必至に脇の下の匂いを嗅いでいるリュースティアを見かねてかウカじいがくさくないとフォローを入れてきた。
ふぅ、一安心。
「魔力の質?魔力なんて種族が同じなら質も一緒じゃないのか?」
確かに魔族と人族では魔力の質が違う。
魔族は荒々しさと力強さを兼ね合せた感じなのに対して人族は控えめで繊細。
獣人は鋭く尖った感じで精霊は不安定。
けどそれは種族特性みたいなもんだと思って特に気に留めていなかった。
現にメーゾルで暮らしていてみんなの魔力の質に違和感を持ったことがない。
「もちろん違う。わかりやすく言うとすれば魔法属性に大きく左右されとるのぅ。じゃがわしが言っておるのはそういう事ではないのじゃよ。」
なるほど。
確かに使える魔法属性によって魔力の質が違うって言われれば納得だ。
火と水の魔力が同じなわけないよな。
けどそうなると二つ以上の属性を持ってたらどうなんだ?
それに精霊と契約してる奴は?
魔法や魔力のことはだいぶ勉強したと思っていたがまだまだ奥が深いな。
今度ルナにでも教えてもらおう。
それか今度ウカじいを尋ねて教えてもらうのもいいかもしれない。
ルイセントよりも頼りになりそうだしね。
「魔力の質については分かったけどウカじいの言うそういう事じゃないって?俺と前にどっかであったことあるわけないしな。」
なにせ前世は異世界ですから。
ウカじいも前世が地球出身とかなら会っているかもしれないがさすがに年齢が千を超えているとすれば時間軸が合わない。
というかそもそも地球には魔法は存在しない。
あるのは魔法のような化学技術だけだ。
「お主とは間違いなく初対面じゃよ。お主とよく似た魔力を持つ者に心当たりがあっての。その方を思い出すと懐かしくなるのじゃ。なにせ数千年以上前の事じゃからのぅ。」
数千年以上前の知り合い?
待て待て待て。
もしかして、いやそんなはずはない。
そんな偶然あるわけがないさ。
「あー、ちなみにさそのお方ってだれ?間違いであってほしいけど多分俺の知り合いかもしれん。」
「忘れもせん。創造神様じゃ。」
*
あー。
あー。
あー、やっぱりか。
まぁそうじゃないかって思ってたんだよね。
だってさ、俺って転生してるじゃん?
神界でいろいろ手続きしたじゃん?
し、か、も!
あのくそじじいの加護とかもらってるみたいだし?
まぁそのせいで余計な運命を背負っちゃったわけなんだけどさ。
まぁこのスキルはありがたいからいいけど。
「そもそも神がこの地に住まわれていたころ、わしをお造りになられたのが創造神様じゃ。それからはあのお方にお仕えしてきたのじゃよ。ほっほっほ。まぁこんなことを話しても神代を知らぬお主ら若い世代には理解できぬ話であろうな。」
懐かしそうにそれでいてどこか誇らしげに語る。
その表情だけであのくそじじいを敬っていることがわかってしまった。
見解の相違。
「どうじゃ?お主の知り合いとは天と地ほどの差があるお方であったじゃろ?」
「ごめん、めちゃめちゃ知り合いだったわ。」
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