第229話 足止めと秘密
*
「ほんといいおじいさんだよねぇ。魔王たちがだいぶイライラしてるんだよねぇ。」
迷惑だと言っているが態度とかみ合っていないせいかまったく迷惑そうに感じじゃないんだよな。
マルスがゲーム感覚で楽しんでいる様子が目浮かぶ。
だがマルスはともかく、他の魔王が怒っているのはそれなりに問題じゃないだろうか?
それに疑問も残る。
確かにウカじいの実力があればアルたちを数日くらいなら足止めできるだろう。
だからウカじいが何かしたのなら現状にはなんの疑問もない。
「ウカじい、どういうことだ?」
俺が思う疑問はウカじいがなぜアルフリックたちの邪魔をしているのか、という点だ。
ついさっき、神の眷属である自分は出来事を傍観するだけだと言っていた。
なら立場はあくまでも中立のはず。
ここで奴らを妨害すれば敵対することは避けられない。
傍観者という立場を捨ててまでウカじいはなにをしたい?
「ほっほっほ。」
その顔に笑みを浮かべるだけで答える気はなさそうだ。
何となくわかる。
これはいくら問いただそうと口を割らない。
おそらくみんなの前では。
「マルス、もしそっちに動きがあったら教えてくれ。」
ここは早めに引き上げてもらうとしよう。
それに敵陣の真っ只中にいる以上、常にバレるリスクと隣り合わせだ。
マルスがそんなへまをするとは思えないがリスクは低い方がいいだろう。
「あは、なんだかようやくスパイらしくなってきたねぇ。けどわざわざ僕が教えなくてもおじいさがわかるんじゃない?」
「そうかもな。けど俺たちはウカじいとこの先も行動を共にするわけじゃない。だから現場からの情報の方が正確かつ早い。」
「ふーん、じゃあそういうことにしといてあげるぅ。まったねぇ。」
ったく、こっちの思惑をわかってんだったら黙って退場してほしいよ。
現れた時と同じように突然この場から姿を消す。
そして後にはまだ少しの輝きを残す魔道具とその消えていく光と反比例するように表情を取り戻していくリズたちがいた。
うん、君たちってほんとにこういうときは分かりやすいよね。
*
「ほっほっほ。なにか用でもあるのか?」
おっと、バレたか。
リズたちが寝静まったころ、一人で鍛錬をしていたらウカじいを見つけた。
村から少し離れた丘の上で胡坐をかき、遠くの湖を見ていた。
何となく声をかけにくい雰囲気だったのでバレないように気配を消して様子を伺っていたんだが。
「いや、何となく声かけにくくてさ。それよりもなんでバレたんだ?」
特に用があるわけではないが明日ここを立つ、ならば今のうちに聞けることは聞いておこう。
リュースティアは丘の上に座るウカじいの隣に腰を下ろす。
「ほっほっほ。お主もまだまだじゃのぅ。わしは魔法を書き換えることができると言ったじゃろ?それと同じように一部のスキルも無効化できるんじゃよ。わしの半径5m以内では魔法もスキルも使えないと思った方がよいぞ。」
うげ、マジか。
それってチートにもほどがあんだろ。
いくら神の眷属とは言え最強すぎんだろ。
つかだから最初に俺の気配感知に反応がなかったのか。
魔法も無効化するし、敵じゃなくてよかった。
「なぁ、1つ聞いていいか?」
「なんじゃ?さっきのも質問だったしのぅ、もう1つくらいいいじゃろう。」
ったく小さいこと気にするじいさんだな。
そんなの質問に入んないだろ。
面白がってるというか完全に俺のことからかってやがる。
だが俺も大人だ、ここで乗ったりなんかしない。
何もなかったかのように話を進めてやる。
「なぁ、なんで俺たちを助けるようなことしたんだ?神との約束でもある見守るっていう役目を放棄してまでどうしてあいつに敵対するようなことしたんだ?」
これは俺がさっき聞きたかったことだ。
あの場では絶対に言わないだろうと思って追及しなかったが。
もしかしたら誰かに話したがっているのかもしれない、あの時、ウカじいの目を見てそう思った。
だから他に人のいないこの場所でなら、、、。
なにか聞けるかもしれない。
数秒か、それとも数分か。
重い沈黙があたりを支配し始めたころようやくウカじいが口を開いた。
「、、、、、、懐かしいのぅ。」
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