第224話 神に近き者

「はっ、はくしょん!!ルイ、俺に殺されても文句言うなよ?」


じいさんに解凍されたエルランド第一声がこれだった。

しかも剣を抜くろというモーション付きで。


まぁいきなり氷漬けにされたんだしエルランドが怒るのもわかる。

だからルイセント、君が謝れば丸く収まると思うんだ。

 

そんな期待を込めた視線でルイセントを見つめる。

だが普段は察しがいいくせにこういうときは鈍感さを発揮しやがる。


「まともに喰らう貴様が悪い。わざわざ詠唱までして発動までの時間を伸ばしてやったのにその時間を有効に使えなかった己を鍛えなおしてから出直してこい。」


リュースティアの願いは届かなかった。。。。。。。




二人を仲裁するのも面倒なので放置した。

普段のルイセントなならエルランドのことなど適当に流すのだろうがどうやら虫の居所が悪いらしい。

原因はこのじいさんだろうけどさ。

だから変に仲裁してこっちに飛び火されても困るので放置!


「なあじいさん、あんた一体何者なんだ?」


剣と炎魔法による近距離戦闘を得意とする炎竜王エルランド・ヴィルムと多彩な魔法による遠距離戦闘を得意とする賢者ルイセン・セイモア。

この二人の戦いを遠めに眺めながらじいさんと近くの木陰に腰を下ろす。


「ほっほっほ。人に者を尋ねるにはまず自分から名乗るのが礼儀じゃろ?」


「そうだな、俺はリュースティア・カリアード・メーゾル。この村へは目的地への中継地点として寄らせてもらった。旅の目的はあくまで俺個人のものだと思ってくれてかまわない。」


うん、違和感。

初めて家名を名乗ったわ。

あのちょっとヒステリーが入ってるような先生にしごかれまくったのについぞ披露する機会がなかったんだよね。

まぁそんな機会なくていいんだけどさ。

あっ、ちなみにミドルネームは考えるのもめんどくさかったのでそのまま使わせてもらってる。

子供がそのまま使う事自体は珍しいことでもないらしいしいいだろ。

もっとも継ぐ場合には新たにもう一つ付けるのが一般らしいが。


「ほっほっほ、メーゾルの時期領主じゃったか。あの小僧が後釜を決めるような歳になったという事かのぉ。年を取るわけじゃな。」


ラウスさんを知ってんのか?

しかも小僧呼ばわりって、このじいさん何歳だ?

つか俺が名乗ったんだから名乗れし。


「ほっほっほ。そんな言わんでもちゃんと名乗る。わしはウカ、この村の村長をしておる。皆はウカじいと呼んでおる。」


また心を読まれた。。。

そろそろ心を守る魔法なり技術なり真剣に考えよう。

これは対敵だとかなりまずそうだ。


「で、ウカじいあんたはいったい何者なんだ?ただの人間、ってことはないだろ?」


「ほっほっほ。そういうお主からは懐かしい気配がするのぅ。それよりもシルフ様とは契約をしておるのか?」


懐かしい気配?

あいにく俺はウカじいに合ったことなどないし、スキルを介して得た情報云々でも見た記憶はない。

まさか前世で出会っていた、なんてことはないだろうし。

それより俺にとってはシルフのことよりウカじいの正体の方が重要なんだけどな。


「出会ったのは偶然だな、まぁなんやかんやがあって契約したって感じかな。あと水のウンディーネ、光のルナとも契約してる。なにか関係があるのか?」


「ほっほっほ。面白い子が来たもんじゃな。風に水に光か。生命の源、すべてを司る白き瞬き。ほっほっほ、長生きはするもんじゃのぅ。」


ウカじいはなぜか楽しそうに体を揺らしながら笑いだした。

だめだ、ウカじいの笑いのツボがわからない。

それよりもまだ謎が一個も解明していないのに新たな謎を足すのやめてくれ。


生命の源、白き瞬き?

なんのことだ?


「それで、ウカじいは何者なんだ?」


何回目だろう、この質問。

そろそろ引き伸ばすのも限界だろ?

答えてくれ。


「ほっほっほ。神に創られ神の力の一部を与えられた神のなりそこないじゃ。シルフ様達太古の精霊の兄弟、または神の眷属、ともいうのぅ。」







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