第223話 解凍
*
「ほっほっほ。年の功というやつじゃな。」
声に反応してじいさんを見ると、まるで何事もなかったかのようにそこに立っていた。
しかも彼の立っている位置はおそらく魔法を受ける前から一歩も動いていない。
リュースティア自身も動いていたし、正確な位置は把握していないがおそらく間違いない。
その場を一歩も動かずにルイセントの魔法を無効化させた。
どうやったのかは知らないが年の功などと一言で片づけていい問題ではないことだけは確かだろう。
俺の気配感知をすり抜けたことといい、一体何者だ。
ルイセントとは知り合いらしいが、だからと言って敵ではないとは言い切れない。
今のうちに殺るか?
「ほっほっほ。安心せい、お主らと敵対するつもりはないわ。」
「じいさん、心が読めるのか?」
くそ、リズといいルイセントといい、このじいさんといい、どうして人の心を読める奴がこうもたくさんいるんだよ。
プライバシーなんてないようなものじゃんか。
いや、それとも単に俺がわかりやすいだけ、とか?
まぁ、ソレはないな。
「ほっほっほ。これも年の功じゃな。それよりもこやつを何とかしてやらなくてよいのか?女性の彫刻ならうちにほしいが男のはいらんし、かといって処分するわけにもいくまい。」
「私は知らん、貴様で何とかすればいいだろう。」
おい、駄賢者。
エルは仲間だろうが。
そもそもあんたの巻き添えくらってんだぞ。
責任もってなんとかしてください。。。。。
「・・・・。ルイセント?」
「知らん。」
どことなくなげやりのルイセント。
彼女の表情を伺おうとしたがそらされた。
そしてそのままそっぽを向いてしまう。
ん?
もしかして、、、。
いや、もしかしなくても拗ねてません?
*
「とりあえずここでよいじゃろ。」
ルイセントが拗ねてしまい駄賢者モード全開になってしまったので年の功というやつに頼ることにした。
多分リュースティアにもできるがここはウカじいがどんな魔法を使うのか見た方が得だ。
何しろこのじいさんは謎が多すぎる。
ウカじいが凍ったエルを下ろしたのは何の変哲もない開けた場所だった。
周囲はルイセントの魔法で凍ったまま。
生命の息遣いは聞こえない。
「ここでなにすんの?」
「解凍じゃよ。森をこのままにしておくわけにはいかんじゃろ。森が凍り生命が静止したと知ればシルフ様に怒られてしまうしの。」
シルフ様、だと?
このじいさんシルフの信者か?
うん、このじいさんとシルフは合わせてはいけない。
「リュー!大変なの!森が凍っちゃったの!」
あー、もう!
言ってるそばから!
森の変化を感じたのかリュースティアの影に避難していたはずのシルフが現れた。
まだ影からこっちに出られるようにはしていないので精霊の道をつかって出てきたらしい。
タイミングの悪いやつだな、相変わらず。
「シルフ様?」
「はいなの!」
はぁ、これはあれか。
ルナとルイセントが再会した時と同じ流れか。
だが俺とてこのシチュエーションは二回目だ。
そう思い通りにいくとは思うなよ。
「はい、ストップ!じいさん、まずは解凍が先だ。シルフもこのじいさんが森は何とかしてくれるからおとなしく見てろ。」
「怪しいの。けどリューがそういうならわかったの。」
シルフが素直にうなずいた。
こいつっていつもやかましいし馬鹿なんだけど素直なんだよな。
アホというかスレてないというか、、、。
「シルフ様がそう言うならさっさと解凍を済ませるかの。」
シルフが素直に言うことを聞いたからかじいさんも特に異論をはさむことはなかった。
凍っているエルランドに近づきその体に手を触れる。
そしてブツブツと何かを唱えだした。
だがそれはリュースティアが聞いたことのない言語だった。
創造スキルの派生技能、
全てを訳したわけではないが祈り言葉のようだ。
ん?
つかこれ使えばさっきの門番と意思疎通できたじゃん。
今更なことに気が付いた。
とかなんとかやっているとじいさんの手が赤く光り出しそこを中心に赤い光が広がっていく。
そしてその光が触れた部分から氷が溶けだしていく。
まるで魔法そのものがなかったことにされたかのようにきれいに氷が消えていく。
氷が解け水になることもない。
最前と全く変わらない大地が、木々が、森が、生命がそこにはあった。
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